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座席で通話OK! 新幹線の「リモートワーク推奨車両」でWeb会議は現実的か? 乗って検証してみた(1/2 ページ)

» 2021年02月01日 19時00分 公開
[石井徹ITmedia]

 「1号車はリモートワーク推奨車両です。この列車にご乗車の方なら、どなたでもご利用いただけます」

 列車が上野駅を出て数分後、車内放送で告知されると、数人の乗客が移動してきた。JR東日本は、東北新幹線「はやぶさ」103号盛岡行きの1号車を、2月1日から「リモートワーク推奨車両」として運用し始めた。はやぶさの他にも東北新幹線の一部列車が実証実験の対象だ。

 新幹線をリモートワーク推奨車両にする意味は何か。実際の使い勝手は? サービス初日に記者が乗車し、本サービスの狙いを探った。

JR東日本が東北新幹線で始めた「リモートワーク推奨車両」
リモートワーク車両を備えた「はやぶさ103号」

座席で通話やWeb会議OK “マスキング音”で聞き耳対策も

 新型コロナウイルス感染症の流行によって広まった“新しい生活様式”は、働き方や社会にも変化を与えた。都心部では在宅勤務に移行する人が増え、鉄道会社の経営にも大きなインパクトを与えている。今回の実証実験の目的は、その変化に対応する新たな鉄道サービスのニーズを探ることだ。

リモートワーク推奨車両とはいうものの、実証実験の段階では普通車と同一仕様

 新幹線の座席では通常、携帯電話の通話は禁止されている。通話をする場合はデッキに移動するように、というのがいつものアナウンスだ。ただし、今回の実証実験で設定される「リモートワーク推奨車両」については話が別だ。携帯電話での通話はもちろん、ノートPCを開いてWeb会議をしてもいいとされている。

 今回の実証実験では1日当たり4〜5本の列車に「リモートワーク推奨車両」が設置される。リモートワーク推奨車両は指定席ではなく、その列車の乗客なら誰でも追加料金なしで利用できる。座席の利用は先着順で、“仕事に集中できるように”1席ずつ離して座るよう案内される。

車両の出入り口に案内が張られていた

 マスク着用を条件に休憩や談笑などにも使えることになっている。ただし、乗客の様子をみる限りでは、やはりノートPCを使った作業をする人が多いようだ。この車両では、話している内容が周りに聞こえないような配慮もなされている。

 シートそのものは通常の東北新幹線車両(E5系普通車)とまったく同じ仕様。各座席のACコンセントも利用できる。テーブルは特急型車両よりも広いが、筆者が携行している12.3インチの「Surface Pro 7」を置くにはやや手狭にも感じられた。それでも隣に人がいない分、余裕を持って作業できたのは確かだ。

情報マスキング音で聞き耳対策 イヤフォンマイクも持参が吉

 リモートワーク推奨車両では「情報マスキング音」が流れている。これはヤマハが開発した技術で、雑踏や人の話し声に近いホワイトノイズのような音を流して、声が聞こえる範囲を狭める技術だ。

ヤマハ製の「VSP-2」から流れるホワイトノイズにより、周囲の席の会話が聞き取りづらくなっている
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