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座席で通話OK! 新幹線の「リモートワーク推奨車両」でWeb会議は現実的か? 乗って検証してみた(2/2 ページ)

» 2021年02月01日 19時00分 公開
[石井徹ITmedia]
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 実際、乗車中は前後左右の座席の席での会話はほとんど聞こえなくなる。ホワイトノイズによってキーボードの打鍵音も紛れるため、周囲に気兼ねすることなく、ノートPCを使った作業に集中できた。

 一方で、スピーカー通話の声も聴き取りづらくなる。Web会議に参加する予定なら、イヤフォン付きマイクを用意するべきだろう(ノイズキャンセリング機能付きならなおよし)。

 上野を発車して大宮を出るまでの短い乗車時間だったが、LINEアプリで音声通話を試してみた。東京〜大宮間の低速走行の区間ではあるものの、トンネル区間の通話は途切れがちな印象。マスク越しの遠慮しがちな会話に加えて、不安定な通信による断絶もあるようだ。

 4G LTE通信は移動しながらの連続した通信は苦手なため、これは仕方ないところともいえる。通信品質を考慮すると、盛岡駅以北のようなトンネル区間が連続する区間では、Web会議などに出席するのは難しそうだ。

 この車両を利用する人には、モバイルWi-Fiルーターの貸し出しも行われる。貸し出し機種はKDDIの5G対応ルーター「Speed Wi-Fi 5G X01」だ。新幹線の車内ではフリーWi-Fiも利用できるが、安定した通信を求めるならルーターの貸し出しを受けたほうがいいだろう。また、メガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」の貸し出しも行っており、アプリで集中力を可視化する機能を試すことも可能だ。

横3人掛けの中央と2人掛けの通路側が使用不可となっている

KDDIとの「空間自在プロジェクト」の一環

 KDDIは2020年12月にJR東日本との協業で「空間自在プロジェクト」に取り組むことを発表している。今回の取り組みはその第1弾に当たる。

 KDDIはリモートワークを支える通信やIT技術を持ち、JR東日本は駅や不動産など都市の接点を有している。両者が提携することで、リアルとバーチャルを掛け合わせた新たなサービスを提案するとしている。

 今回のリモートワーク推奨車両について、KDDIの役割はルーターを貸し出すだけという。ただし「新幹線でWeb会議を推奨する取り組みに対して、どのような受け止め方がされるかはKDDIとしても関心がある」としている。

 両社の構想は多岐にわたるが、計画中の取り組みとしては、コワーキングスペース同士をつなぐ「分散型ワークプレイス」というシステムがある。これは、ディスプレイを通して離れた空間をつなぐアイデアだ。

 例えば東京、千葉、埼玉に点在するオフィスに壁面を覆う大きさのディスプレイを設置する。大型ディスプレイにカメラ映像でほかのオフィスの様子をつなぐことで、離れた場所で働く同僚と、あたかも隣にいるかのように共同作業ができる。

 この分散型ワークプレイスが浸透し、例えば最寄りの駅にあるコワーキングスペースで使えるようになれば、在宅勤務よりも効率のいい共同作業ができるようになるかもしれない。

 一方で、地方に工場を構える企業など、ポスト・コロナ時代も移動のニーズがなくなることはない。リモートワークが当たり前の時代には、「移動中の新幹線を第三のオフィスとして使う」というニーズも必然的に生まれそうだ。今回の実証実験を通じて、新幹線の新たな利用スタイルが見いだされるのか、反響や動向を注目したい。

リモートワーク推奨車両の対象列車一覧
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