Googleが2月2日にStadiaのオリジナルゲームスタジオを閉鎖すると発表したとき、残念だけどやっぱりなぁと思った人は多いのでは。スタジオの責任者でソニー、EA、Ubisoftと、ゲーム業界の複数の開発チームで活躍してきたジェイド・レイモンドさんは、Googleの文化には合わなかっただろうなぁと想像します。
Stadiaというのは、日本ではまだサービスを開始していないGoogleのゲームストリーミングサービスです。2019年3月に発表し、米国などでは同年11月に提供開始しました。月額制で既存のゲームをゲーム機や高性能なゲームPCがなくても遊べるという、MicrosoftのProject xCloud(これはコードネーム。今は「Xbox Game Pass Ultimate」の一部になっています)と同じようなサービスです。
今のところサードパーティーのゲームしかありませんが、Stadiaでしか遊べないキラーアプリを作ろうとして立ち上げたのがオリジナルゲームスタジオでした。
Stadiaの責任者、フィル・ハリソンさんはスタジオ閉鎖について公式ブログで「最高のゲームをゼロから作成するには、何年もかかり、多大な投資が必要」なので断念したと説明しました。
それは覚悟の上だったはず、とも思いますが、たぶんレイモンドさんのチームは覚悟した以上のお金を使ってしまったのでしょう。ハリソンさんは「コストが指数関数的に上昇している」とも言ってます。
Googleはレイモンドさんをスカウトしたとき、「お金はいくら使ってもいいから、すばらしいゲームを作って一緒にゲーム業界に革命を起こそう」みたいなことを言ったんじゃなかろうか。で、レイモンドさん率いる約150人のアーティスト気質でこだわりの強いゲーム開発者さんたちが本気出したところ、経営側の想定をはるかに超えるお金が掛かった上に、いつまでたっても完成しなかったんじゃないかと想像します。(この連載「Googleさん」は「記事」ではなく「コラム」なので筆者の想像が入っています。あしからず。)
Stadiaトップのハリソンさんもゲーム畑を渡り歩いてきた方ですが、経営側で結果を出すことを求められる大人なので、苦渋の決断なのでしょう。キラーアプリがなければ既存の他のサービスから人を引き剥がすのが難しいことくらい、とても良く分かっているはず。同氏の古巣、XboxのMicrosoftがZeniMax Mediaを買収したのは、オリジナルゲームを作るつもりなんじゃないかとみられています。
Stadiaはこれから、サードパーティーのゲーム開発者やパブリッシャーに既存ゲームやこれから開発するゲームをStadiaでも遊べるようにしてね、とお願いしていく路線に1本化します。
Googleに協力することで、パブリッシャー側にはどんな得があるでしょう? まずはお金。小さいけれど実力のあるゲームスタジオは、Googleから金銭的に支援してもらえば助かるでしょう。でも実はこっちが大事かなと思うのは技術的なこと。StadiaのためにGoogleが開発したオンラインゲームのための技術インフラはさすがに高度なものでしょう。Stadiaにゲームを最適化するツールを使うことで、開発者はノウハウを吸収できます。
GoogleはStadiaの前に「Project Stream」という、「アサシンクリードオデッセイ」をPCの「Chromeブラウザ」でプレイする実験をやっています。昔からWebの高速化を追求してきたGoogleさんにとって、Stadiaのきっかけはそこにあったのかなと思います。
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