このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
コーネル大学とカリフォルニア大学デービス校による米研究チームが開発した「Eslucent」は、人間のまばたきを検出するウェアラブルデバイスだ。まぶたの上に取り付けたセンサーは、アイラインやアイシャドウのように見える。
人の認知活動や精神状態を識別できるとされるまばたきを検出するには、これまでは外部カメラやスマートグラスに搭載されている赤外線近接センサーを使う、皮膚に電気回路をシールで貼り付けるなどの手法を用いていたが、かさばるうえに目立ってしまうという問題があった。
今回のデバイスはアイシャドウの中にアイライン風のセンサーをシールで貼り付け、メイクで電子機器をカムフラージュできる。色も黒や銀にカスタマイズが可能だ。このやり方は二重まぶたを作り出すアイリッドステッカーからインスピレーションを得たという。
6つの層で構成されたデバイスは、まぶたの上に貼り付け、耳の後ろを通るようにファイバーが伸び、その先にはマイクロプロセッサとBluetoothモジュールが取り付けられている。センサーはまぶたの動き(目の開閉など)による静電容量値の変化を捉え、センサーから送られた静電容量データをマイクロプロセッサが処理し、コンピュータに無線伝送する。
実験では、デバイスを装着した状態で、意図的なまばたき、会話、ビデオ鑑賞、数学の勉強、音楽鑑賞の5つのタスクを被験者に行ってもらった。検出の平均精度は82.6%を達成。一方で、計測中に頭を大きく動かすと精度が落ちることが認められた。
想定される用途としては、睡眠サイクルのモニタリング、眠気の検出、集中力の計測、動揺や緊張、嘘をついている時の心理状態検知、活動への関心、などが考えられるという。PCやスマートフォンなどのディスプレイを長時間見ることで起こるVDT(Visual Display Terminal)症候群を回避するため、まばたきリマインダー機能として活用することも考えられる。
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