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Clubhouseはラジオ業界の“黒船”か 番組制作の現場の視点は(1/3 ページ)

» 2021年03月26日 07時00分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 “音声版Twitter”と呼ばれ、1月下旬から話題となったClubhouse。トーク履歴が残らないため、著名な芸能人や起業家と気軽に交流できたり、普段は聞けないオフレコトークが聞けたりするとして、日本でもユーザー数が増加した。

 最近は一時の盛り上がりが落ち着きつつあるものの、Clubhouseをきっかけに音声コンテンツが注目を浴びたことについて、Clubhouseが登場するはるか前から音声分野で番組コンテンツを発信してきたラジオ業界はどう見ているのか。Podcastなどデジタルツールを活用したコンテンツの経験が豊富な、TBSラジオの担当者2人に話を聞いた。

「音声メディアとして新しい」「かなりラジオに近い」

 「招待制と聞き、mixiを思い出した。ルームを探してのぞく楽しみがあり、音声メディアとして新しい感覚だった」。Clubhouseの印象をそう語るのはTBSラジオの福井康平さん。入社後、番組制作や設備構築を行う技術職を経て、現在はTBSラジオのデジタル戦略を統括するプランナーだ。Clubhouseのサービスが始まった時は社内でも話題で盛り上がったという。最初は仕事柄、アプリを開くことが多かったが、今は特定の配信者のルームがある場合に開く程度に減少し、「今はPodcastなど以前から音声コンテンツが好きだった人が残っている印象」という。

 同社で番組プロデューサーを務める橋本吉史さんは「かなりラジオに近いサービス」と印象を持ったという。橋本さんは現在はカルチャー番組「アフター6ジャンクション」(平日午後6時〜9時)のプロデューサーを務める他、TBSラジオの音声コンテンツ配信サービス「AudioMovie」(オーディオムービー)で配信中の「令和版 夜のミステリー」のプロデューサーも務めている。

photo 橋本吉史さん(左)と福井康平さん

「『もうだめかもしれない』と何度も思った」

 Clubhouseに一時注目が集まったことで音声コンテンツが脚光を浴びたように見えるが、橋本さんによるとそうではないという。

 「きっかけは音声で操作コマンドを受け付けるスマートスピーカーの普及だった」(橋本さん)。このときにまず、音声時代の到来を予感したという。その後、音声コンテンツの配信サービス「Podcast」が世界的に再び流行。当時は「現代人は音声で何かを聞くのは無理だ」「聞く能力が育ってない」という声が業界内でも根強かったものの「Podcastが流行るということはトークが流行っているということ。ラジオが流行っているのと同じ感覚だった」と橋本さん。

photo インタビューに応じる橋本さん

 そうした中で、Clubhouseに人々の関心が集まった。「現状のラジオに近いClubhouseが流行るのは音声の中でも生放送のブーム。生放送が流行るということは本格的にラジオブームが来ているなと前向きに捉えていた」といい、Podcastなどの登場以降、指摘されていた「音声コンテンツ時代の到来」を確信したという。

 「『もうだめかもしれない』と何度も思ったが、何年か前よりもずいぶん明るい未来を見られるようになった」(橋本さん)

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