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長期化するライフライン停止で問題なのは“電気以外”だデジタル防災を始めよう(2/2 ページ)

» 2021年03月31日 11時40分 公開
[戸津弘貴ITmedia]
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カセットガスはどれだけ用意しておけばいい?

 非常時には、カセットコンロを使うことが多いと思うが、カセットガスの必要量を把握している人はどれだけいるだろうか?

 一般的なカセットコンロの場合、強火で使えるのは1時間程度だ。非常時だから節約して使うとしても1日1本は使ってしまう計算だ。ガスの復旧まで55日かかるということならば、最低でも50本以上備蓄しておく必要がある(IHクッキングヒーターやホットプレートを用意しているのであれば、電気の復旧を期待して、カセットガスは7本程度あればよいということになる)。

 真空保温調理器は短時間加熱した後、保温容器で調理を進めるので使用するガスを節約できる。火を使う時間も最小限にできるので、余震などの心配がある状況でも安心して調理できるのがうれしい。

 サーモスのメーカーページには製品を活用したレシピも多く紹介されている。「沸騰時間」が5分程度で、食材の下ごしらえなどが簡単なものだと非常時にも作りやすいだろう。東京ガスの防災レシピページでは、火を使わないレシピや高密度ポリエチレン製のポリ袋を活用することで災害時でもおいしくバラエティーに富んだ食事を楽しむことができるレシピを紹介している。

photo サーモスのレシピサイト

 ポリ袋をつかった「湯せん調理」はちょっとしたブームで、スーパーなどでも対応したポリ袋が売られている。湯せん調理の利点は、その水が飲用に向かなくてもポリ袋による調理なら問題なく、しかも繰り返し使える。そしてポリ袋から直接食べれば食器も汚れない。真空保温調理器と組み合わせれば燃料も節約でき、相乗効果が得られるだろう。

 火を使わないメニューは、もう一品欲しいという時の時短レシピとしても優れている。真空保温調理器も、昼に仕込んでおいて夜食べる、キャンプに出かける朝に仕込んでキャンプ場に着いたらすでに一品できている……など普段使いで活躍するので、“いつも”と“もしも”の両方で活用できるだろう。

意外に忘れがちなトイレの備蓄は要注意

 防災対策というと、水や食料などの備蓄はするが、意外と忘れがちなのがトイレの問題だ。特に集合住宅の場合では、排水管の点検が終わるまではトイレは使用できないと考えておくべきだ。何故ならば、排水管が破損しているとそこから汚水が漏れたり、逆流するなどのトラブルが起こるからだ。

 といっても、水洗トイレの水が流せないだけで、トイレの空間自体は活用できる。便器にかぶせて使用する非常用トイレを使えばトイレの場所確保を心配しなくて済む。

 再びここで問題になるのが何日分(何回分)のトイレを用意すればいいかということだ。

 一説には、1日のトイレの利用回数は5回とも言われている。2人暮らしなら1日に10回分、4人家族なら20回分必要という計算になる。

 下水道の復旧には、上水道とおなじく1カ月程度かかると仮定すると、1人当たり150回分のトイレが必要になるのだ。さすがにそこまで備蓄はできないとしても、1週間分で35回、2人暮らしなら70回分の備蓄が必要になる。

 それ以外にもトイレットペーパー、消毒薬、ウェットティッシュ、LEDランタンなども備えていると安心だ。使用済みのトイレを捨てるまで保管しておく、フタの閉まるゴミ箱、衣装ケースのような容器も忘れないようにしたい。

 防災マニュアルを読んだり、非常用アイテムリストを見るだけでは、どれだけの分量が必要かなかなかイメージできない。避難所に行くのか、自宅で避難生活をするのか、または被災地域から離れた場所に避難するのか、という状況に応じた「マイタイムライン」をあらかじめシミュレーションしておくことも重要だ。

 東日本大震災から10年が経過し、ようやく一つの区切りがつくかというタイミングで大きな地震があり、今も余震は続いている。かつて「災害は忘れたころにやってくる」といわれていたが、最近はなかなか忘れさせてくれないようだ。気を抜かずに防災の備えを確認したい。

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