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» 2021年04月09日 15時25分 公開

デジタル一眼で「フィルムテイスト」の動画を撮るとはどういうことなのか新連載「小寺信良のIT大作戦」(1/3 ページ)

ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する新連載「小寺信良のIT大作戦」。

[小寺信良,ITmedia]

 ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する新連載「小寺信良のIT大作戦」。第1回は、デジタル一眼を使った動画撮影で最近人気の「フィルムテイスト」について、小寺信良さんに解説してもらった。


 

 4K・HDR対応テレビの価格破壊が凄まじいことになっている。特にTCLやハイセンスといった中国メーカーの製品は、43型程度の中型機であれば3万円台から入手可能だ。このところの巣ごもり需要を受けて、2台目3台目の購入も増えているところである。

phoot 43型4K・HDRのテレビは3万円台から買える

 こうした格安テレビに置いても、もはやNetflixやhulu、YouTubeといったネット動画配信サービス機能内蔵は当たり前になっており、デジタルシネマ作品も4K・HDRが増えている。もはや「解像度だけ4K」では、がっかりされる時代といえる。

 一方でデジタルカメラも、フルサイズミラーレスが好調である。こちらはそれほど低価格商品ではないが、やはり今どきの製品としては4K撮影は当たり前、ハイエンドでは6K、8K撮影という製品も登場している。

photo ソニーα1は8K・HDR撮影が可能

 デジタル一眼で動画を撮るメリットは、やはりその「フィルムテイスト」にある。映画のようなワンシーンを自分でも撮影したい、そういう願いを叶えてくれるわけである。

 だが実際のところ、何をどうすれば「フィルムテイスト」になるのかは、よく理解されていないところだ。筆者が考えるに、フィルムテイストには以下のような要素が必要だろう。

  1. 浅い被写界深度
  2. フレームレート
  3. カラートーン

 1はすでにデジタルカメラでの動画撮影が始まった10年以上前からいわれていたことである。被写界深度をより浅くするには、広い撮像面積、開いた絞り、長い焦点距離が条件となる。一般に35mmフィルムでの動画撮影はフィルムを縦に使うので、写真における35mmフィルム撮影より撮像面積が狭い。したがってフルサイズのデジタルカメラ動画撮影の勃興時期、フィルム撮影の経験があるプロの間では、フルサイズではボケ過ぎ、という評価もあった。

 当時放送用ビデオカメラはセンサーが2/3インチであったため、よほど望遠を使わない限りは被写界深度が浅くならなかった。こうした反動もあって、背景がボケるという表現は、プロの間でも新鮮に受け止められていった。

 しかしせっかくのロケーションやセットでの撮影で、背景がボケボケでは意味がない。そこで絞りを開放ではなく5.6〜8ぐらいまで絞れば、ボケ過ぎの状態を適切な深度に戻せる。さらにそれぐらい絞った方がレンズの解像感も増す。そんなことから、コンシューマーにはフルサイズセンサーで撮ればフィルムっぽくなる、というセオリーが生まれた。

 2の「フレームレート」は、映像のテイストに非常に大きな影響を与える要素だが、コンシューマーでは意外に受け入れられるまでに時間がかかった。映画では24fpsで撮影するのが一般的だが、テレビCMでは30fpsで撮影する。映画的なコマ落ち感を保ちつつ、テレビ放送の60fpsと相性がいいからである。

 デジタルカメラで4K撮影が可能になり始めた頃、フレームレートが30fpsまでのカメラが多かった。だがコンシューマーでは、ビデオカメラがこれまでインタレースではあるものの60fpsであったため、物足りないという批判が多かった。映画は24コマという知識は広く知られていたが、30コマでも撮影することがあるとはあまり知られていなかったのである。

 しかしこの4K/30p時代は、意外に長く続いた。センサーの放熱や電力消費、画像処理プロセッサの処理速度の問題解決に時間がかかったからである。そうこうしているうちに、多くの人が30fpsの映像表現に慣れていった。

 コマの少なさは、動きの解像感の減少につながる。動きに生々しさがなくなれば現実感が薄れ、映画っぽい印象になる。現在多くのフルサイズデジタル一眼で4K/60Pの撮影が可能になってきているが、多くのコンシューマーユーザーが好むフィルムテイストからすれば、60Pはマストではなくなっていった。

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