4K映像はHDRというワードとともに語られることも多いが、現在4Kの映像には3段階がある。1つは、解像度だけ4Kになったもので、初期の4Kカメラはみなこれである。
次のステップとして、「4K+HDR」がある。これは輝度のダイナミックレンジを大幅に拡張したもので、SDRと比較して100倍に拡張された。HDR映像を正確に表現するためには、ディスプレイ輝度が1000nit以上必要とされているが、コンシューマーではすでにその線引きが曖昧になっており、400nitから500nit程度でもHDR対応と表示しているケースは多い。
その次のステップは、「4K+HDR+Rec.2020」がある。解像度と輝度だけでなく、色域も拡張したものだ。これはRec.2100という規格にまとめられている。Rec.2020の色域を100%表示できるディスプレイはなく、最高でも98%ぐらいである。
ただこの高輝度・高色域は、フィルムテイストとはあまり関係ない。むしろフィルムを超えた「デジタルシネマ」の領域の話になる。Netflixで公開されているような作品レベルで映像を作りたいという人は避けて通ることはできないが、これを撮るとなると大変だ。
まずデジタルカメラでは、「Log」で収録しておく必要がある。これはセンサーの能力目一杯を記録しておくために、人間の目のコントラストや色域に合わせず撮影する方法で、メーカーによって微妙に違いがある。
Log収録した映像は、人間の目には低コントラストで色味も薄く見えるので、これをバリッとしたRec.2100対応の映像に仕上げるためには、編集ソフトを使って画像処理を行わなければならない。写真でいえばRAWで撮影したデータを現像するみたいな処理である。
当然その処理を行なうためには、PCにRec.2100出力が可能な装置(グラフィックスカードや拡張ボックスなど)を接続し、Rec.2100対応ディスプレイを接続しないと、結果が見られないことになる。さらに映像作品にするためには複数のカットをつないでいく必要があるが、すべてのカットに対して同様の処理を行い、さらに前後のつながりがおかしくならないように微調整する必要がある。こうした手間をコンシューマーのユーザーに求めるのは、非現実的だ。
「つなげば出る」ぐらいの簡単さにおいては、HLGで撮影するという方法もある。HLGで撮影したカットを、カメラのHDMIからHLG対応のテレビにつないで映せば、高輝度・高色域の映像を表示できる。だが撮影した動画ファイルをPCなどに取り込んでしまうと、結果的にはLog収録素材を処理するのと同じ手間がかかる。
そもそも、コンシューマーユーザーが広く自分の映像を見てもらえるプラットフォームは、ネットしかない。だがネットコンテンツは、何で表示してもらうかを指定することはできず、必ずしもHDRディスプレイで見てもらえる保証がない。
つまりコンシューマーユーザーが気軽にHDRコンテンツを作って見てもらえるほど、世の中は簡単にはなっていないというのが現実だ。
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