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カラーフォントとバリアブルフォントで文字表現を超えたクリエイティブへ 日本語Adobe Fontsの新たな地平(1/2 ページ)

» 2021年04月20日 10時29分 公開
[菊池美範ITmedia]

 4月10日に開催されたアドビのイベント「フォントの日」では、日本語バリアブルフォントとカラーフォントが、大きな驚きを持って迎えられた。イベントに先立って行った、アドビのフォント担当者へのオンラインインタビューで、Adobe Fontsでこれらの新機能をどのように広めていくつもりなのか、聞いた。イベント当日の模様は、「フォントの日」で驚かされた、草を生やすカラーフォントと日本語バリアブルフォントの記事を参考にしていただきたい。

  • 岩本崇氏(アドビ フィールドプロダクトマネージャー)
  • 山本太郎氏(アドビ Japan R&D、日本語タイポグラフィ、シニアマネージャー)
  • 聞き手:菊池美範
photo アドビ フィールドプロダクトマネージャー 岩本崇氏
photo アドビ Japan R&D、日本語タイポグラフィ、シニアマネージャー 山本太郎氏

―― Creative Cloud無料メンバーシップで利用できるフォントと有料メンバーシップとで、利用できるフォントの数や利用方法にどんな違いがありますか。

岩本 私たちはプロのクリエイターの方々だけではなく、ビジネスパーソンと呼ばれる方々にも積極的にAdobe Fontsを使っていただきたいと思っております。

 有料メンバーシップと無料メンバーシップでは使用できるフォントの数に違いがありますが、フォントをサービスとして使う機能そのものについては同じものです。有料メンバーの方々は436の日本語フォント、無料メンバーの方々は138の日本語フォントが使用できます。新たにご参加いただいたメーカーさんと、これまでご参加いただいていたメーカーさんの追加書体も合わせると、これまでの有料メンバー245フォント、無料メンバー35フォントに比べて大幅に増えております。特に無料メンバーのお客さまにとってはメリットが大きいので、これは使わないともったいないのではないか、というところまできたと思っております。

 無料、有料にかかわらずメンバーの方はCreative Cloud Desktopというアプリをインストールしていただきます。これがフォント管理ツールとなり、OSに不可視ファイルとしてユーザーのPCにインストールされます。フォントを指定して変更ができるアプリケーションであればどんなものでも利用できますので、プレゼンテーションやビジネス文書に大いにご活用いただけるのではないでしょうか。より伝わる、説得力のあるプレゼンテーションや提案文書が無料で実現できます。

 クリエイティブプロフェッショナルの方々にとっては、436の日本語フォントでも十分な数だとは思っておりません。しかし、これからデザインをスタートされる方、社内でコミュニケーター的な役割を担われる方にはお役に立つと思っておりますし、プロフェッショナルの方にはクリエイティブでフォントを使うための土台になると願っております。

―― Adobe Type制作チームによる貂明朝のカラーフォントは実際にどんなシーンで使われることを想像されていますか。

山本 これまでは、モノクロ2値で文章を読むために使うことを主目的にしているのがフォントの役割だと思われていましたが、貂明朝についてはグリフの中にカラーを入れることができるようになったことで、フォントの機能にカラーを実装することが可能になりました。貂明朝のキャラクターとして含まれている動物のかわいさをカラーで表現できるし、オリジナリティーも出せるという面があります。干支の12種類がカラーイラストとして含まれているので、年賀状をフォントだけで作成できますし、雲やお天気マークなどをピクトグラム的なイラストとして使うこともできます。天候や時候の挨拶で文書のワンポイントとして使うという用途も考えられます。

photo これだけで年賀状の作成も可能な貂明朝

 カラーフォントは従来の出版や印刷で使われてきたフォントとは意味が異なり、パーソナルな用途で家族や友人とやりとりするというシーンが増えていけば、もっと感情をビジュアルで表現できるようになり、それが今後もっと重要になってくるのではないかと思います。

 フォントがこれまで紙に印刷することを主目的にしたものから、携帯端末でのコミュニケーションやデジタルサイネージ、Webでのダイナミックな変化をするタイポグラフィーに変わりつつある時代に、これまで印刷の文字では表現できなかった領域に踏み込んで、表現の幅を広げることが必要です。私たちがまだ知らない表現について開拓していく分野がまだあるということです。カラーグリフについてはSVGの技術を使っているのですが、これをうまく応用して発展させていきたいです。

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