代替肉、スマート農場、クッキングロボットなど、フードテックにはさまざまなアプローチがある。そういった目に見えて、触れられる食材、食体験や調理の進化とは別に注目されているのが食に関わる工程のDXだ。流通のスピードアップや働き手不足を解消するための情報のやりとりをデジタル化することで、フード業界全体の業務効率化を図るというもの。
その一つとして注目されているのがマッチングサービスで、その代表格はUberEatsだろう。各店舗のスタッフが直接配達する従来のデリバリーと異なり、飲食店とフリーの配達員をマッチングさせることで出前の革命を起こした。食品ロス削減に悩む飲食店や食品メーカーが割引価格で食品や調味料を提供する売りきり・食べきりプラットフォーム「TABETE」も、フードテック枠のマッチングサービスといえる。
そして吉野家ホールディングスグループのシェアレストランの取り組みも、マッチングサービスだ。シェアレストランはその名のとおり、レストランの設備を希望するシェフに貸し出す仕組みを、Webサービスとして提供している。
近年、既存の飲食店を間借りして料理を提供しているシェフが増えている。物件契約費、キッチン設備の導入を含めた内装外装の施工費を省けるとあって、低コストで飲食のテストマーケティングができるメリットがある。
しかし「間借りって、よっぽど仲が良くなければできなかったんですよ」と語ってくれたのは、シェアレストラン代表取締役の武重さんだ。
シェアレストラン代表取締役である武重準氏は、吉野家やはなまるうどんの店舗開発、新業態開発を担当。2017年に社内ベンチャー制度でシェアレストランの企画をプレゼンし勝ち残り、吉野家ホールディングスの100%子会社として、シェアレストランを創業した。
気に入った店舗があったとしてもその店の店主が物件オーナーでなければ又貸しとなってしまうために、交渉がスムーズにいかないことがある。オーナーとの直接の交渉の場が持てたとしても、調理器具や食器、店舗の設備を破損させたときの保証や、オーナー側が急きょ店舗を利用したいときなどの対応が難しい。
「メリットがたくさんあるし、どんどんやればいいじゃないと誰もが言うのですが、赤の他人とキッチンをシェアするというのはとてもセンシティブでトラブルが多いんです」(武重さん)
そこでシェアレストランの出番となる。バー、レストラン、カフェといった飲食店の空き時間を貸し出したいオーナーと、時間限定でも自分の店舗を持ちたいユーザーとをつなげる間借りマッチングプラットフォームによって結びつける。感情論が優先してしまうこともある人と人とのやりとりをネットとデジタル技術で補完するというわけだ。
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