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月数万円から飲食店を始められる間借りのマッチングサービス食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界(2/3 ページ)

» 2021年04月28日 17時54分 公開
[武者良太ITmedia]

時間・曜日限定だが月数万円から飲食店運営が可能に

 武重さんが、吉野家ホールディングスがなぜ間借りに注目したかを尋ねてみた。

photo アジアンな風味がキャッチーな担担担の汁なし担々麺

 「飲食店は最も廃業率が高い産業です。主な理由はスタッフ・後継者不足と、開業時の借入が返せずに辞めてしまうケースがありますが、この両者をマッチングできないか。われわれが入ることによって、オーナーと飲食業にチャレンジしたい人、両方を支援できるのではと考えたのです」(武重さん)

 オーナー側のメリットは、バーやスナックなど夜営業している店舗などで昼間も店舗自身が稼いでくれるようになる。家族の介護などで一定期間休みを取ることも可能になる。間借りしたいシェフ側のメリットは、自分の考案したメニューの価値を早く世に問うことができるし、予約がいっぱいになるほどのファンを開拓できたら自分だけの店舗を借りるという自信につながる。もし失敗してしまったとしても、大きく借り入れをしていなければ再起できる可能性が高い。

 昼だけ、夜だけ、定休日だけの間借りで、しかも契約期間は1カ月から。例として上げると、東京・学芸大学駅徒歩3分の鉄板焼店は朝8時から13時までの利用で月6万7500円だった。ブランチに適した飲食店のミニマムスタートを行うには、安いという印象を受ける。

 「オーナー、利用者共に入会費、年会費などはなく、スペースの登録代や掲載料もありません。予約制で先払い。スペースの予約が入ったらスペース利用料の20%の手数料をいただき、保険代を引いた金額をオーナーに振り込んでいます。店舗内の破損などについては自己負担3万円で、3万円を超える破損などがあったときは保険で補償します」(武重さん)

既存概念にとらわれない新しいアイデアが人気店に

photo ダイスカットされたトマトの味が効いたイーチャンの汁なし担々麺

 一般的にレストラン開業の初期コストは1000万円以上、居抜きでも数百万と莫大だが、調理内容に合わせて最適な設備を用意できる通常の店舗形態と異なり、間借りに適したメニューはあるのだろうか。

 「間借りって自分で利用できるスペースに限りがあるから、豊富なメニューでお客さまを満足させる総合レストランってできないんですよ。だから1メニュー、2メニューくらいの専門店が適しています。特にカレーやラーメンは間借りと相性がいいです。また地下アイドルやコスプレイヤーの方が、ファンサービスの一環としてお店を開くというケースも相性いいですね。あとはテイクアウト専門店やゴーストレストランでしょうか」(武重さん)

 武重さん曰(いわ)く、今まで飲食業界を経験してこなかったけど個性的な人のチャレンジが目立っているという。その一つがブロッコリーと鶏胸肉のテイクアウト・デリバリー店だ。「栄養素・味・価格を究極に追求した低糖質食を提供します」という、ダイエットに興味を持つ人に刺さるキャッチコピーと美しい写真でアピールして人気を獲得。全国の大都市圏に支店やフランチャイズ加盟店を持つまでになった。

 間借りのトレンドは首都圏が中心だが、将来的には地方のシャッター商店街や、郊外のロードサイドにも広がる可能性もある。古くから地元で飲食店を経営していたオーナーと、若い人とのつながりの話となる期待感もある。

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