サーバの性能は年々上がっているが、人々のWebサービスへの依存度も高まっており、性能は追い付いていない。年に数回しかない「混雑する日」に合わせてサーバを用意するのも効率が悪い。
というわけで、Webサービスにとって「短時間にアクセス集中する」のは鬼門である。当然ながら、各サービスは混雑対応の技術を導入し、課題に対応している。
アクセス集中が想定される場合には、一時的にサーバを増強し、それぞれに負荷を分散することも多い。特に現在は、クラウドインフラ事業者からサーバを借りて運営することも多いため、そうした処置もしやすい。一方で、負荷分散の仕組みを打ち砕くほどのアクセスが来ることも多く、万能の解決策ではない。
これがショッピングや予約でなく、映像配信やWebの表示の場合、現在ではある程度解決策が生まれている。「コンテンツデリバリー・ネットワーク」(CDN)の活用だ。
CDNとは、コンテンツを事前にたくさんの地域へと分散して配置するための専用ネットワークであり、インターネットと同時に存在する「もう一つのネットワーク」と言っていい。今やほとんどのWebサイトでCDNは使われていて、負荷を「ネットワーク全体で支える」ことで快適なコンテンツ視聴が担保されている。
Netflixなどの映像配信を使っていて、「なぜこんなにたくさんの人が見ているのに、ネットワークは混雑しないのだろうか」と思ったことはないだろうか? 米国のサービスを視聴しているのだから、普通に考えると「日本から大量の人が、海底ケーブルを介して大量の映像を伝送している」となり、とても無駄に思える。
ただ実際には、CDNによって映像は事前に「各国の各地域」に転送済み。東京から視聴したとすれば、Netflixにアクセスしたとしても、実際には東京のどこかにあるCDNにアクセスし、映像が自分のところへと転送されている。
ちなみに、Netflixの場合には、数年前のデータの場合、98%の映像再生が「その人の居住地近くのCDNから再生されている」という。すなわち、国際的なネット回線への負荷は小さなものに意外と小さくなっているのである。実際問題、こうした工夫がなければ、こうした映像サービスは成立しない。
こうした仕組みは「コンテンツ表示」には非常によく効くものの、ショッピングや予約では有効ではない。利用者の情報登録などの処理が必須だからだ。だから、古典的な負荷分散などの手段は使えるが、CDNの効果は非常に限定的である。
というわけで、予約サイトは今日も落ちるのだ。
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