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「ネット予約」はなぜ落ちるのか どうすれば落ちないのか(3/3 ページ)

» 2021年05月21日 13時05分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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「予約のアクセス集中対策」にはシステム外の知見が必須

 では解決法はなにか?

 答えは、意外とシンプルである。

 決まった時間に大量のアクセスが集中しないよう、「システムの外で工夫する」のだ。

 一番簡単な方法は、「“何時から”という告知をしない」こと。なんとなくこの日のこの時間帯から、というぼんやりした状態にしておけば、全てのアクセスが同じ時間に来る最悪の状態は防げる。ただこれも、結局は程度問題にすぎず、「予約が始まった」と周知されるとアクセスは集中してしまう。

 次に、「予約などを段階性とする」こと。アクセス集中するのはしょうがないとして、その場での処理を軽くすることで負荷を軽減するやり方だ。例えば、予約の「受付」だけをして情報の入力は後日に回すわけだ。

 また、「先着」でなく「抽選」にするのも効果がある。先着になるととにかくみんなが急ぐことになるが、一定期間抽選を受付、後日抽選に当たった人に正式予約を連絡……という形にすることで、「一斉に同じ時間に来なくてもいいですよ」とアナウンスし、アクセス集中を回避するのである。PlayStation 5などの人気商品販売では、このパターンが使われることが増えている。

 ただ、どの方法も完璧ではない。多数の人とアカウントを用意したり、Botなどを使って「自動アクセスする手段を用意したりできる、いわゆる「業者」の方が有利な点は否めない。そこで、過去の販売履歴やクレジットカードの種類など、ネットワービスの外にある工夫を組み合わせることになる。

 ワクチンの予約についても、全員に対してシンプルに「何日何時から」という予約の方法は、アクセス集中対策という面では問題があったと思う。例えば、対象者をグループに分けて予約受付日時・時間を変えて、その後で受付順を抽選して通知するなどの方法もあるだろう。

 そもそもワクチンについては、「確実に一定の時期に接種できる」よう周知と手続きを進めることの方が重要だ。人より1日早く接種を受けても影響は小さく、「社会全体での接種率が急速に上がる」ことの方が、個人の感染防止にも蔓延(まんえん)防止にも重要だ。ワクチンは重要だが免罪符ではない。不安感が殺到に直結している部分もあるので、ここもまた「システムの外」での対処が必要になる。

 混雑にシステムは弱い、という認識を皆が持った上で、「ではどうするといいのか」という点を考える必要がある。そこで必要になる知見やアイデアはシステム的なものだけではなく、その外にもある。ある意味で「ITリテラシー」とは、そうしたことを意識しておくことでもあるのだ。

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