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もがくオーディオメーカー コンシューマーオーディオはどこへ行くのか? ゼンハイザー、オンキヨーの身売りで考える小寺信良のIT大作戦(2/4 ページ)

» 2021年05月25日 12時56分 公開
[小寺信良ITmedia]

オンキヨーの紆余曲折

 一方で国内オーディオメーカーとしては大手のオンキヨーが、債務超過状態を解消できず、2021年7月ごろには上場廃止の見込みとなった。それと合わせて、ホームAV事業をシャープや米VOXX Internationalへ事業譲渡すべく、協議を行うことが明らかになった。

photo オンキヨーのホームAV事業譲渡の発表文

 シャープとはもともと2018年からテレビ用スピーカーシステムで協業しており、白物家電が好調だからこそ余裕があるということだろう。さらにオーディオ製品にはそれほど強いものがなく、AQUOSブランドのサウンドバーと肩掛け型スピーカーがある程度である。

 一方米VOXX Internationalは、米国でのオンキヨーの販売代理店となっている11 Trading Companyの親会社である。またオンキョーとシャープはマレーシアでジョイントベンチャーの生産会社を立ち上げており、この販売をVOXXが行ってきたことから、こちらも関係が深い。

 オンキヨーの創業は1946年だが、実は1957年から東芝グループの傘下であったことはよく知られていない。この資本関係は、東芝がバブル崩壊で経営悪化する1993年まで続いた。

 独立後は多くの会社と資本・業務提携を繰り広げてきた。

 2007年にPCメーカーのSOTECを買収、2012年には老舗ギターメーカーのGibson、日本のオーディオメーカーTEACとも資本・業務提携を行った。2015年にパイオニアのホームAV事業を買収、また同年KAWAIとも資本・業務提携した。

 SOTECブランドは既にないが、パイオニアブランドはオンキヨーの下にある。今回の事業譲渡にパイオニアの文字はなく、今後同ブランドがどうなるのか気になるところである。

 オンキヨーはもともとスピーカーメーカーで、オーディオコンポブームの時代に多くの銘機を生み出してきた。現在も主力はスピーカーで、AVアンプ、ミニコンポなども製品数が多い。

 一方イヤフォン・ヘッドフォンでは、2016年に完全ワイヤレスの「W800BT」がタイミングもよく、かなりの人気商品となった。だがBluetoothコーデックがSBCしか対応しておらず、時代の流れを読み切れていなかった。

 後継機が期待されたが、イヤフォンの大半はパイオニアブランドで展開しており、オンキヨーブランドは少ない。2019年には米Klipsch(クリプシュ)の代理店にもなったことから、ますます自社ブランドでイヤフォンは展開しづらくなった。

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