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もがくオーディオメーカー コンシューマーオーディオはどこへ行くのか? ゼンハイザー、オンキヨーの身売りで考える小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

» 2021年05月25日 12時56分 公開
[小寺信良ITmedia]

構造が変化した音楽リスニング

 筆者がいちいちイヤフォンへの展開に拘る理由は、音楽の聞き方が昔とは変わってしまったからである。今音楽ソースはネットのストリーミングが主体であり、メディア再生ではない。再生装置はミニコンポではなく、スマートフォン+イヤフォンが主力だ。

 Bluetoothスピーカーがばか売れした時代もあったが、家族全員巣ごもりの時代に、一人だけスピーカーで音楽をガンガン聴くという用途が減ってきた。そんなイヤフォン全盛時代、数を捌(さば)いているのは米Apple、米Anker、オランダJabraといったIT企業だ。特に完全ワイヤレスは、スウェーデンのEarinのようなITベンチャーが切り開いた分野である。

photo イヤフォン市場を席巻しているApple AirPodsファミリー

 スピーカーで数を稼いでいるのは、米Amazon、米Googleのスマートスピーカーだ。これらはBluetoothスピーカーというジャンルでは統計に乗ってこないが、価格的にも製品サイズ的にも競合する。

 家庭内に2台3台あっておかしくないという製品であり、さらに新製品が出れば毎年、もしくは2年に1回程度は買い替えてるという人もいる。

 これは、スマートスピーカーが単なる音楽の出口ではなく、情報機器だからだ。こうした傾向は、1人1台が標準になったスマートフォンと傾向が似ており、一般のBluetoothスピーカーには見られない傾向である。

 オーディオの名門といわれたメーカーが立ち行かなくなったのは、IT市場の波に乗れなかった、という分析は成り立つ。ではどのような乗り方をすればよかったのか。

 ゼンハイザーやオンキヨーが自社ブランドで、ITですスマートですといって製品を出しても、オーディオブランドに疎いITガジェットユーザーには響かない。今この方法で戦って通用しているのは、ソニーとJBLぐらいだろう。

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