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パナソニックのカメラ撤退はあり得るか小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

» 2021年05月27日 09時19分 公開
[小寺信良ITmedia]

「フルサイズ」の評価は高いが……

 マイクロフォーサーズしか持たないパナソニックが「DC-S1」および「DC-S1R」でフルサイズへ参入したのは、2018年のことだった。フルサイズミラーレスで一人勝ちしていたソニーを追うタイミングとしては、遅くない。レンズはライカが開発したLマウントを採用し、シグマともアライアンスを組むことで足元を固めたが、初号機はミラーレスとは思えない超大型のカメラであった。

 続く2019年発売の「DC-S1H」は、シネマを意識して6K撮影までサポートした。2020年の「DC-S5」は、サイズをマイクロフォーサーズ機並に抑え、価格もS1シリーズの半額に抑えるなど、フルサイズをあっという間に大衆の手が届くものにしたのは、さすがの手腕であった。

 「DC-S1R」は2019年のカメラグランプリを受賞、2021年には「LUMIX S 20-60 mm F3.5-5.6」がカメラグランプリ2021のレンズ賞を受賞した。どちらもパナソニックとしては、初めての受賞である。

photo 「S1R」

 逆にいえば、20年もやってきたマイクロフォーサーズでは一度も受賞しなかった。いかにマイクロフォーサーズがハイエンド層から冷遇されていたかが分かる。

 今デジタルカメラ業界は、フルサイズミラーレスによるハイエンド化で生き残ろうとしている。マウントも一新し、過去との離別を図ろうとしているところだ。だがLUMIXというブランドは、コンパクトデジカメからマイクロフォーサーズを代表するもので、小型大衆機のイメージが強い。

 パナソニックも同様に、ハイエンド化で生き残ろうという戦略であれば、フルサイズ機はLUMIXブランドから離れるべきだった。だがあえて同じブランドにしたということは、マイクロフォーサーズがそうしてきたように、フルサイズも大衆化・マス化していくという戦略なのだろう。

 デジタルカメラの機関部品であるイメージセンサーは、2020年9月の半導体事業譲渡に伴って、ヌヴォトンテクノロジーに売却してしまった

 これまでLUMIXは、独自開発のLiveMOSセンサーを搭載してきたが、今後センサーは他社調達になる。最新のセンサーはなかなか搭載しづらいだろう。ただ、周回遅れでも十分なセンサーはたくさんあり、低価格化路線へシフトしやすくなるのも事実だ。

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