米ニュージャージー州が運転免許の性別欄で、女性でも男性でもない性別「X」を選択できるようにしたというニュースがあった。米国では別に珍しいことではなく、これで19州目だという。
運転免許に限らず、英語圏の国では多様性の尊重が重視される。
例えば簡単なアンケートでも性別欄は「男性」「女性」「その他」の選択肢があるのが普通だし、婚姻関係も「既婚」「未婚」だけではなくて「de facto(事実婚)」「civil union(結婚と同等の法的権利を認めたパートナー関係)」など多種多様。そうした中で、従業員や幹部が白人男性に偏りがちなテック大手がやり玉に挙げられるようになり、AppleやGoogleなどの各社が毎年従業員の性別や人種構成を公表するようになった。
そのキーワードとなっているのが「Inclusion & Diversity」。例えばAppleは2021年3月に発表した報告書で、黒人やラテン系、女性従業員の比率が増え、管理職も増えたと強調している。
Across Apple, we’ve strengthened our long-standing commitment to making our company more inclusive and the world more just.
Appleは全社的に、私たちの会社の包括性を高め、世界をもっと公正にするという長年の取り組みを強化しています。
「Diversity」というのは多様性のこと。
性別や肌の色だけでなく、性的指向、宗教、民族、障害の有無、体形など、さまざまな多様性が含まれる。そして組織や社会がそうした多様性を尊重して受け入れ、取り入れることを「Inclusion」と呼ぶ。これは「含める」という意味の動詞「include」の名詞形で、形容詞にすると「inclusive」になる。Cambridge Dictionaryはこの文脈のinclusionを「the act of allowing many different types of people to do something and treating them fairly and equally」(さまざまな種類の人々に活動してもらい、そうした人々を公平かつ平等に扱うこと)と定義する。AppleやGoogleのような企業には今、そうした多様な人材を採用して活用することが求められている。
企業だけでなく、Inclusion & Diversityは社会のさまざまな場面で重視される。例えば米Disneyは映画やテーマパークのアトラクションで、特定の人種や民族に対する偏見や、性別に関する固定観念を排除する姿勢をアピールしている。テーマパークで働くキャストについても性別を問わない「gender-inclusive」なヘアスタイルや服装に関する個人の表現を尊重すると発表し、ある程度のタトゥーを見せることも容認した。
一方、日本のディズニーランドは今も学校の校則並みに厳格な身だしなみ規定を男女別に徹底させているらしい。ニュースに出てくるような会社の幹部はオジサンばかり。別にオジサンが悪いわけではないけれど、Inclusion & Diversityがここまで乏しい現実はちょっと悲しい。
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