このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
東京大学 篠田・牧野研究室の研究チームが開発した「Super Haptoclone」は、立体映像に触覚を与えられる双方向テレプレゼンスシステムだ。
相手の上半身が空中に3次元映像として表示され、それに触れると超音波により立体的な触覚が得られる。さらには触った感覚を相手に与えられる。
今回の手法は、上半身の3次元映像を提示する視覚情報システムと、触った感覚を提示する触覚情報システムから構成される。
視覚情報システムは、7枚のミラー群と1mの大型MicroMirror Array Plates (MMAPs)を使う。これらを互いのワークスペース(作業域)同士が対称的になる構造で組み合わせる。この構造により、一方のワークスペース内の光を透過と反射で転送し、離れた場所に肉眼でみえる3次元映像を表示する。
触覚情報システムは、空中超音波触覚ディスプレイ(AUTD)を使う。ワークスペース内の3次元映像が表示される対象スペースを囲むように空中超音波触覚ディスプレイを設置する。
空中超音波触覚ディスプレイは、空中の任意の位置に超音波の焦点や細かい分布を作り出し、何もない空間で触覚を再現できる。対象スペースの空間に3次元的な超音波の場を生成することにより、3次元映像を触った際に立体的な超音波の力で触った感覚が得られるという。
研究チームは、触った感覚を相手の上半身に伝えるためのジャケット型触覚デバイスも作成した。ジャケットは通信チップ搭載のバイブレーターモジュールと、導電性の糸をメッシュ状に縫った布地で構築。複数のバイブレーターモジュールを衣服上に散りばめ、部分的に駆動させる方法で局所的な触覚を再現する。
複数のバイブレーターモジュールをそれぞれ配線でつなぐのではなく、ウェアラブル2次元通信(two-dimensional communication、2DC)と呼ぶ通信技術で各バイブレーターモジュールと通信して給電し、布地に刺繍してある導電性の糸を媒体としている。これによって、個別の配線を必要としない、シンプルで軽量なジャケット型触覚デバイスが実現できたという。
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