山口准教授は河野大臣のツイートのように、国の要職に就く人物や著名人がデマを否定することもファクトチェック同様に効果があるとしている。
例えば「ワクチンを打つと不妊になる」というTwitter上のデマでは、6月4日時点でこの話題に触れる投稿は335件あり、このうち約66%がデマを信じているか、うそだと判断できないといった内容だった。
しかし24日に、「この話題はデマ」として河野大臣が自身のブログ記事をシェアすると、話題に触れる投稿は2500件まで増加。一方で、デマを信じているか、うそだと判断できないといった内容の投稿は、全体の約48%に減少した。
「Twitterは情報について強い思いを持った人が投稿をする傾向にあるため、(デマを信じない人に比べ)信じている人の投稿の方が多くなりがち。その中でもデマを信じる人の割合が減り、デマを信じない人の絶対数が増えているため、一定の効果があるのでは」
デマの打ち消しに一定の効果を持つファクトチェック記事や著名人によるツイート。これらを積極的に活用し、ワクチンの接種率向上につなげるために、国やSNSなどのプラットフォーマー、メディアなどが連携して取り組むべきことが3つあると山口准教授は指摘する。
1つ目は、ファクトチェックの迅速な発信だ。ワクチンに関するSNS上の投稿は、5月時点で4〜6万件程度だったのが7月には14〜16万件程度に増えており、この中にはデマも含まれる可能性が高いという。
デマが増えれば、それに対応するファクトチェックも効率的に発信する必要がある。山口准教授は「統計的に妥当な報道をするメディアなどが迅速にファクトチェックを行い、SNSのプラットフォーマーと連携して伝えていける(環境づくりが)重要」と話す。
2つ目は、国の要職に就く人物や著名人によるデマの否定を積極化することだ。河野大臣による発信のように、デマをうそだと判断できない層を減らせる可能性があるという。
3つ目が、ファクトチェックの結果などを一元的に管理することだ。山口准教授によれば現在、ワクチンに関する情報は厚生労働省や内閣官房などが発信しているものの、それぞれの情報がまとまった場所がなく、国民がアクセスしにくいのが現状という。
そこで国が発信する情報や信頼できるメディアによるファクトチェックの結果をまとめたプラットフォームを用意し、国民が正しい情報にアクセスしやすくすることで、ワクチンへの誤解を解きやすくなるとしている。
「現状では(ワクチンに関する情報を確認するために)どのサイトを見ればいいのか分かりにくく、一市民では情報の真偽を確認しづらい。事実をまとめたプラットフォームを作成し、ワクチンに対する誤解を解くことが、ワクチンの接種率向上にもつながるのでは」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR