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統計から見る「テレビのオリンピック需要」幻想と「日本のテレビの20年」(1/4 ページ)

» 2021年07月29日 17時05分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 オリンピックが始まった。

 それと同時に、ちょっと気になることがあったので、今回は少し数字を見ながら過去をさかのぼる旅をしてみたいと思う。

 それは何かというと、「オリンピックでテレビが売れる、というのは本当か」という話だ。

 確かに「オリンピック商戦」といわれることが多いのだが、筆者が子どもだった40年前ならともかく、ライターとして仕事を始めていた1990年代半ば以降、現場では「テレビがこの時期にバッチリ売れた」という話を聞いた印象がない。むしろ「そんなものは幻想だ」という話ばかり聞いた記憶がある。

 そこで改めて「過去20年の間、テレビは日本でどう売れてきたか」を数字で見ていきたい。そう思って、今回はExcelと格闘してみた。その中から、オリンピックとテレビの関係も見えてくるだろうと思ったからだ。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年7月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。

過去30年「オリンピックでテレビが売れる」わけではなかった

 次のグラフを見ていただきたい。

photo JEITAの「民生用電子機器国内出荷統計」から、テレビの国内出荷台数をグラフ化。オリンピック開催年と販売数量の伸びにはあまり関連が見られない

 これは、一般社団法人・電子情報技術産業協会(JEITA)が公開している「民生用電子機器国内出荷統計」から、テレビの国内出荷台数を抜き出し、筆者がグラフ化したものである。

 赤で示したのがオリンピック開催年だが、その年に大きく伸びてはいない。

 ということは、結論はシンプルだ。少なくとも過去20年の間、「オリンピックでテレビが売れる」という現象は存在していないのである。

 ではもっと前はどうか? JEITAはネット上で、2000年より前の統計情報を公開していない。だが参考として、経済産業省が2019年1月に公開した「テレビジョン受信機の現状について」という資料に、同じJEITAの統計に基づく、1990年以降のデータがあったのでご紹介しておこう。

photo 経済産業省が2019年1月に公開した「テレビジョン受信機の現状について」という資料より抜粋。前述の表と違い、1990年から2000年までの傾向が分かる。あまり大きなトレンドの変化はない

 ご覧の通り、1990年から2000年までの10年も出荷傾向に変化は見られず、「少なくとも1990年以降、テレビ市場にオリンピック特需はなかった」ことが裏付けられる。

 え? この資料があるなら自分でデータ作らなくてもよかったんじゃないかって?

 鋭い。実は、この資料は自分で手を動かす前に見つけていたのだが、あえてちゃんと自分で数字を追ってみたい、と思ったので前掲のグラフを作ったのだ。冒頭で述べたように、数字と格闘することで自分の中で見えてくることがある、と思っている。実際にはもうちょっと面白いことが見つかった。

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