ではもうちょっと深掘りしてみよう。年ごとのデータではなく、月ごとのデータで見ていくのだ。
次のグラフは、2000年1月から2021年6月までのテレビの出荷数量をまとめたものだ。
このグラフはいわゆる「積み上げ式」。CRTと薄型、4K対応で分けた。薄型テレビは統計上プラズマと液晶が分かれていた時代があるが、両者は合算している。現在は有機ELも含め「薄型テレビ」として集計されている。4Kテレビは、JEITAの統計がスタートした2015年から起算している。その性質上細かいデータになったので、数字を見るというより、変遷を見ていただければ、という意図で作ったものだ。
当然だが、前傾の年単位のグラフと大きな形は変わらない。だが、よりディテールが見えてきている。薄い水色の点線は年末を示すもの。比べるとお分かりのように、テレビが売れているのは今も昔も基本的に「年末」である。オリンピックの開催時期も重ねてみたが、アテネ大会(2004年)で多少、前の年の年末や開催時に山が見えるくらいで、他は目立った変化がない。ロンドン、リオデジャネイロあたりになると、オリンピックの影響はほぼ感じられない、といっていいだろう。
むしろ影響が大きいのはやはり「地デジ」だ。
2011年7月に完全移行したわけだが、当時はいわゆる「エコポイント」によるキャッシュバック需要もあって、恐ろしいほどにテレビの販売数量が伸びている。
同じグラフの上に、オリンピックではなく「日本の放送規格の変化」をプロットしてみると、また面白いことが見えてくる。
BSデジタル放送や地デジの「放送開始」では需要がさほど伸びず、結局強制力が強い地デジへの完全移行に向けてじわじわ伸び、間際になって急速に伸びたことが分かる。現在の4K8K放送も同様で、それによって急速にテレビの販売が伸びた、という状況でもない。直近の変化はコロナ禍での巣ごもり需要と2020年春に支給された定額給付金の影響が大きい。
もちろん、各時期にはちゃんとトレンドがある。放送規格が年末にスタートするのも、「年末にテレビが売れる」という現象とセットで決まるものなのだろう。新しいテレビが売れる時期に放送開始を合わせることで、テレビの販売にいくらかでも良い影響を与えたい……と考えてのことではないだろうか。
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