ITmedia NEWS > AI+ >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

小動物の脳活動をワイヤレス計測 1台約8000円の価格破壊 豊技大が開発Innovative Tech

» 2021年08月03日 17時20分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 豊橋技術科学大学の研究チームが開発した「A lightweight, wireless Bluetooth-low-energy neuronal recording system for mice」は、小動物に取り付け可能な脳活動計測ワイヤレスシステムだ。小さく軽量なためマウスなどの小型の動物に適応できる。安価に製作でき、性能も高いという。

photo ニューロン計測用ワイヤレスシステムを搭載したマウス

 脳の情報処理の仕組みを理解するためには、脳組織内の多数のニューロンの発火活動を同時に測定し、個別に解析することが有効とされる。ニューロンの発火活動を直接捉えるには、微小電極で組織内のニューロン近傍の信号を測定する電気生理学的手法が効果的とされている。

 しかし、脳組織をできるだけ傷つけない低い侵襲性、有線を使わない無線化、信号の質(信号対雑音比を含む)の向上など課題も多い。マウスなどの小型の動物に適応するには、既存のシステムは大きすぎて非常に困難というのが現状だ。

 研究チームはBluetooth技術を使用した小型で軽量なニューロン計測用ワイヤレスシステムを提案。システムは、バッテリーも含め15×15×12mmの大きさで、重さは3.9g以下。小動物にも適応できるサイズと重量だ。

photo ニューロン計測ワイヤレスシステム

 システムは、Bluetoothで通信し、バッテリーも搭載しているため、完全ワイヤレス化を実現している。加えて、システム1台を8000円程度の材料費で製作できる価格破壊的な低コストだ。市販の有線計測システムは数百万円から1000万円程度。

 マウスのインビボ(in vivo、生体内)実験では、既存の有線計測システムと比較して、より高い信号(信号対雑音比を含む)の質が得られ、有効性が実証されたという。

 このシステムは、マウスだけでなく、ラットやサルなどの他の動物への適用も可能という。小型で無線ベースであるため、他の分野での活用など汎用性の高さも期待される。

 今回開発したシステムは、初期段階で1チャンネルの計測範囲にとどまったが、次のステップとして4チャンネルの開発を進めており、それ以上の多チャンネル化も視野に入れているという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.