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おでこを電気刺激すると冷たく感じる VR HMDに応用も 電通大が実験Innovative Tech(1/2 ページ)

» 2021年08月24日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 電気通信大学 梶本研究室の研究チームが開発した「Thermal Sensation on Forehead Using Electrical Stimulation」は、額に電気刺激を与えることで冷感を与える触覚システムだ。

photo 電気刺激装置をゴムバンドで額に固定し装着している様子
photo 電気刺激を与えるポイント

 VR(仮想現実)で温度感覚を与える装置には、通電させることで熱を移動させる機能を持つペルチェ素子をHMD(ヘッドマウントディスプレイ)内側のクッションに組み込む手法、鼻に香りを噴霧し温度感覚を錯覚させるシステムなどの例がある。後者では、直接皮膚を暖めたり冷やしたりせず、人間の錯覚を利用している。

 今回の手法も人間の錯覚を利用する。額に電気的に刺激を与えると、時折、冷感が生じるという現象を活用したものだ。

 額の電気刺激で冷感が得られるのであれば、HMD内部に熱がたまらず、省スペースで消費電力も少なくて済む。熱や化学物質を必要としないため、反応が速いメリットもある。実験ではこの冷感が安定して発生するかどうかを調べた。

 実験に用いた電気刺激装置は、61個の円形電極を等間隔に配置した六角形構造。各電極の直径は1.2mm、電極間の中心距離は2mm、電気刺激のパルス幅は0.5ms、パルス周期は11.0msだ。

photo 電気刺激装置の外観

 実験では、被験者の額の中央に厚さ1mmのゲルを貼り付け、ゴムバンドで電極を取り付けた。ジェルによる冷感の影響を少なくするため、実験はジェルの冷たさが感じられなくなってから行った。

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