そのラジスマ、スマートフォンにラジオチューナーが内蔵されているものを指すのだが、仕組み的にはそれだけではない。radikoのラジスマ専用バージョンをインストールすることで、1つのアプリからFM放送波からの直接受信と、インターネットラジオの両方にアクセスできる仕組みを有したものを、ラジスマと呼んでいるようだ。
直接受信にはネット環境がなくても聴けてデータ通信量を消費しないというメリットがあり、インターネットラジオには電波受信が難しい場所でも聴ける、有料だが全国どこのラジオでも聞ける、タイムシフト放送にもアクセスできるといった利点がある。
初めて登場したラジスマは2019年で、最初は高齢者向けのらくらくスマートフォン的なモデルからスタートした。ラジオの視聴者層は高齢者といわれており、入り口としては間違いではない。
だがradikoの普及に伴い、ターゲットとなるスマホも変わってきた。現在ではASUS、京セラ、サムスン、シャープなどから17モデルの「ラジスマ」が出ている。ライカと協業したことで話題になったシャープのAQUOS R6も、実は「ラジスマ」であると知ったら、見方も変わるのではないだろうか。
高齢者向けではなく、高級モデルにもラジスマ対応モデルが出てきた理由には、聴取者層の変化がある。
午前中や昼時にラジオを聴いていると、ターゲットは高齢者ではなく、40〜50代へ向けての内容が多い。それはラジオCMに顕著に現れており、美容、ダイエット、アンチエイジング、育毛、脱毛、キャンプ用品、調理家電など、まだまだ現役でアクティブに動く人へ向けているのだ。
そこで実際にラジオ聴取の年齢を調べてみた。NHK放送文化研究所が公開している、国民生活時間調査にラジオの聴取時間のデータもあったので、グラフ化してみた。この調査では、放送波の直接受信だけでなく、インターネット経由での聴取も含まれている。調査期間は、すでにコロナ禍に突入している2020年10月だ。
まず男性の傾向から見ていくと、60代から70代以上のピークは朝方で、起き抜けにまずラジオ、といった生活習慣であることが見て取れる。しかし30代や50代が最多になる時間帯も見られる。
30代の傾向を追っていくと、8時台にピークがあるのは、通勤時に車の中で聞いているということだろう。コロナ禍とはいっても、地方ではリモートワークできるような職種は少なく、基本は通勤ベースで働いているという事情がある。
次いで13時台にも安定して高い時間帯がある。遅い昼食を車の中で取るといった姿も垣間見える。社員みんなで休憩室なり食堂で一緒に食事するのを避けるとなれば、それぞれのマイカーの中で弁当なりを買って1人で食べるというのが常態化しているところもあるだろう。
さらに夕方の時間帯にも高いピークがある。これは外回りから会社に戻る途中、そこから退社時間までと考えられる。30代のラジオとの付き合いは、車との関係が色濃く出ているのが面白い。
50代に注目すると、夜中の1時から明け方まで、コンスタントに聞かれている時間帯がある。これはおそらく、警備などの夜勤や深夜便の運輸業かもしれない。テレビを眺めているわけにもいかない職種では、寂しさを紛らすため、人の声が聴けるラジオは格好のメディアであろう。
8時以降から12時までの午前中にも、安定した視聴時間帯がある。お昼になるとガクッと下がっているところから見ても、勤務中にラジオが聞ける環境にあるようだ。
安定しているということは、番組を追っているわけではなく、時間帯でつけっぱなしということだろう。飲食店や小売店舗などの自営業であるとも考えられる。
全体的に見れば、通勤開始から勤務終了まで、10代20代を除けばほとんどの年齢層でラジオが聴かれていることになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR