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「ラジスマ」って知ってますか? もう「年寄りのメディア」ではないラジオ(3/3 ページ)

» 2021年09月09日 08時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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 今度は女性の傾向を追ってみる。男性と違い、突出したところが見当たらず傾向がバラバラではあるが、いわゆる勤務時間帯においては、10代から40代にはほとんど聴かれていない。一方で50代以上の聴取率は男性よりも高い。

photo ラジオの聴取率(女性:平日)

 特徴的な動きがあるのが40代だ。7時前の朝食の支度時間に大きなピークがあり、あとは夕食の支度時間に小さなピークがある。目を離していられない忙しい時間帯には、テレビよりもラジオが貴重な情報ソースとなっていることが分かる。

 50代においては、午前10時ごろにピークがあり、その前後も総じて高めの傾向。夕方15時以降も一定の高さがある。職場でラジオ視聴ができると想定すれば、フルタイムではなく早番・遅番に分かれた短時間で労働しているということかもしれない。

 まとめると、男性は30代以上、女性は50代以上でラジオの接触率が高く、もはや「ラジオは年寄りのメディア」というイメージでは捉えられないといえる。

 ワイドFM対応ラジオの普及よりも、ラジスマのような仕掛けを今から普及させておきたいというラジオ業界の狙いは、悪くない。

 もちろん70代以上の聴取率の高さは無視できないところではある。今の70歳以上は1951年以前の生まれであり、テレビの本放送開始の1953年よりも前ということになる。子どもの頃はよほど裕福でない限りラジオしかなかった世代ではあるが、青年期から働き盛りの時にはカラーテレビも普及し、テレビも相当見たはずだ。

 それでもラジオを聴くというのは、ノスタルジー以外の要素があるはずだ。テレビ視聴のように、じっとしていないと視聴できないわけではなく、何らかの作業をしながらでも聞けるのがラジオの良さである。実は高齢者のラジオ聴取層は、それなりにアクティブに動ける層と関連があるのかもしれない。

 他方で男性のラジオ視聴は、車頼みというところがある。車載オーディオの積み替えはなかなかコストがかかるため、スマホ+Bluetoothでこれまでの習慣を継続してくれるのかは難しいところだ。

 ただ、価格.comで調べてみると、現在ワイドFM対応カーナビは189モデル出ており、そんなつもりはなくても車買い替えたら対応してた、という状況はありそうだ。すでに現時点でワイドFM局は全国に47局あり、おおむね各県には1局ぐらいはありそうな状況になってきている。

 メディアへの接触は、基本的には習慣付けである。リアルタイムメディアであるラジオを、実生活の中にどのように結び付けていくかが課題だ。

 一方で、ネットの音声コンテンツは盛況だ。Clubhouseはすっかり話題にならなくなってしまったが、最近ではstand.fm、voicy、Radiotalk、Spoonといった音声サービスが注目されており、音声によるライブ配信ムーブメントは、実はこっそり起動している。音声コンテンツを聴く習慣を持つ人が増えれば、一周回ってラジオすげえ、やっぱりプロは違うという話にもなるかもしれない。

 放送とネットの融合は、先を見越した戦略ではなく、死ぬか生きるかのギリギリまで追い詰められた結果としてなし崩し的に行われるというのも、いかにも日本的ではある。

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