今回、AppleのiPhone 13 Proに関する発表を見ながら、「ああ、そこを突いてくるのか……」と興味深く感じた部分がある。
それは、キャスリーン・ビグロー監督、グレイグ・フレイザー撮影監督のコメントを引用したビデオが流れた時だ。二人のコメントビデオは「iPhone 13 Proがいかにプロの撮影に使えるか」という話であり、その行為自体は驚くべきところではない。
重要なのは2人がそれぞれ「iPhoneを使うことで撮影の幅が広がった」という言い方をしていることだ。狭いところで使えるのはもちろん、水ぬれや汚れにも(ある程度だが)強い。何より、業務用カメラのように何百万円という世界ではないので、多数用意して使うことができる。
映像制作の現場はこの10年で大きく変わった。
1つの変化をもたらしたのは、GoProやiPhoneのような、コンパクトで性能の良いカメラを搭載した機器が普及したことなのは間違いない。
もちろん、メインとなるシーンは、しっかりしたシネマ用カメラで撮影する場合がほとんどだ。iPhoneだけで撮影された映画もあるが、それはまだ例外的な存在である。
だが、iPhoneが映画に欠かせないものになってきているのも事実だ。同時に多数のカメラをサブ的に回しておき、そこからの映像も使って作品を組み立てる例が増えているからだ。少し過去の作品になるが、日本映画でも「シン・ゴジラ」は、補助的に回した多数のiPhone映像が各所で使われた。いまやそうした手法は珍しくない。特にiPhone 11以降、「Pro」と名付けられたモデルは、そうした映像制作の流れを積極的に追いかけ、アピールする形で作られている。
今回、iPhone 13 ProシリーズではProResでの撮影に対応した。プロのワークフローの中で、より質が高く、後工程での作業での親和性が高いフォーマットであるProResが使えるのはまさに「プロ向け」の変更といえる。
こうした部分はどういう意味を持っているのだろう?
プロでのニーズが増えるといっても、そこで売れる数はiPhoneという世界で一番売れるプロダクト全体から見ればごくわずかな数にすぎない。Proという名前でも、もちろん純粋にプロ市場を狙ったものではない。
プロも使っているということ、それだけのものであるということに価値を持つ人がいるのは事実で、多分にマーケティング的な意味合いでの言葉だろう。だが、こだわりのある個人であるいわゆる「プロシューマー」市場は非常に大きな価値を持っており、iPhoneを含む多くの商品における「Pro」とは、「コアなプロも使える、プロシューマーも満足」と理解すべきだ。
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