分割配送に対応することで、業務削減と効率化を両立するOKIのアルゴリズム。しかし、これまで情報通信領域を主力事業として展開してきたOKIが、なぜ物流の課題に挑んでいるのか。理由は大きく分けて2つあるという。
一つはSDGs(持続可能な開発目標)に即した新規事業を模索していたためだ。OKIは新規事業創出に向けた施策として、環境汚染や労働力不足といった社会課題を解決するような新規分野に取り組む戦略を掲げている。この一環として、物流を新たな事業分野に選んだという。
もう一つは量子コンピュータ技術を活用して2019年に実施した、工場の製造ラインを最適化する実証実験だ。
この実験では、カナダD-Waveが提供するアニーリング型量子コンピュータを活用。OKIのグループ企業・OKIデータの工場にある半導体製造装置や作業員の位置を最適化することで、作業員の移動距離を削減することに成功したという。
この実験が物流への挑戦につながったのは、どちらの取り組みも、数ある組み合わせの中から最適なものを選ぶ「組合せ最適化」の問題であり、「数理最適化」をその解法として活用しているためだ。
OKIデータの工場では、製造工程の異なる複数の製品に対して、いくつもの半導体製造装置を共用して作業員が装置間を移動して製造しており、生産性向上のためには、これらの膨大な組み合わせのパターンの中から最適なものを選択する必要があった。
一方、OKIが開発しているアルゴリズムも、トラックや荷物、輸送先の拠点などの組み合わせからルートを算出する仕組みだ。この共通点から技術応用の可能性があると判断したことも、今回のアルゴリズムを開発するきっかけになったという。
ロンコ・ジャパンと行った実験では、組み合わせのパターンがOKIデータの工場ほど膨大ではなかったため量子コンピュータ技術は活用していないものの、今後は応用も検討するという。
一方でこのアルゴリズムにはまだ問題点もある。例えば(1)店舗による到着時間の指定がある場合を想定した計算ができない、(2)ドライバーごとの運転距離や運転時間が均等になるようなルートを算出できない、(3)有料道路の通行料金を考慮できない──などだ。
ただし、これらの機能を備えたアルゴリズムはすでに完成しており、10月中にもロンコ・ジャパンと協力して実地テストを行う予定という。テスト後は配送事業者向けの商品化も検討しているが、時期や提供形態などは決まっていないとしている。
「OKIは2030年までにサプライチェーン構築の完全自動化を実現したいと考えている。幹線輸送などではベテランが(配送計画を)やっていることが多いが、こういうことを少しずつ高速化したい。今回のアルゴリズムは一部地域でのトラック配送という小さなものだが、これを広げて自動化を実現していければ」
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