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Amazonのロボット「アストロ」、日本の家庭に居場所はある?小寺信良のIT大作戦(2/4 ページ)

» 2021年10月05日 08時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

ロボットが家庭内に入る余地

 現在家庭内に定着しつつあるロボットとしては、ロボット掃除機が挙げられる。自律的に動作し、室内マッピングやセンサーによる障害物回避、アプリでのコントロールなどは、もはや標準機能になりつつある。

 ロボット掃除機の先駆者であるiRobotのルンバが米国で産声を上げたのが2002年。日本への投入も早かったが、普及には時間がかかった。それというのも、日本家屋は米国のように広いフローリングを土足で歩き回るような文化ではなく、掃除機が走り回るような床がない、価格が高いといった課題があった。日本家屋を考慮したルンバ620およびルンバ630が発売されたのは、2012年のことである。

 ロボット掃除機には、明確な用途がある。猫が乗れるというオマケ機能もあるが、基本的には掃除をして、人の役に立つものだ。自律型ロボットではあるものの、生活家電と見なすことで家庭内に居て良いというポジションを築いた。何かの生物を連想させない、円盤型という形状も良かった。もしロボット掃除機に手足が生えていたらここまで受け入れられていないだろう。

 発表されたアストロを見て、ソニーのaibo(現在の表記は小文字だ)を思い出した人は少なくないだろう。初代「AIBO」は1999年に登場しており、家庭内を動き回るロボットという点ではロボット掃除機よりも早い。AIBOは具体的に何かの役に立つわけではないが、ペットとして位置付けられていた。

 ペットはもともと、家庭内にポジションがある。AIBOを見て奇妙だと思った人もいるだろうが、「これどこに置くんだ」とは思わなかっただろう。なんとなく家庭にいる様子は想像できたはずだ。人間との共存の歴史が長い「犬型」であったところも良かった。

 一方でアストロは、機能として必要なものをくっつけただけで、何型でもないように思う。キャスター型掃除機のようなボディー部にお面のようなディスプレイをくっつけたようなスタイルだ。機能をくっつけていくだけという手法は、スマートスピーカーにディスプレイをお面のように貼り付けたEcho Show 10をほうふつとさせる。

photo 円筒形スピーカーにお面を貼り付けたようなEcho Show 10

 奇妙な形状だが、前例がないわけではない。2015年のCESで見かけた「beam」という製品は、アストロよりももっと大型の装置だ。

photo テレプレゼンスロボットの「beam」(CES2015会場にて)

 これは遠隔で受付業務などを行うためのデバイスで、オペレーターと対面で会話し、会場や会議室まで案内してくれるといった用途に利用できる。障害者雇用の面でも注目された製品だ。

 その点で背の低いアストロは、ディスプレイに目鼻を表示するところがペット的でもあり、情報を表示するところはEcho Show的でもあり、移動するカメラとディスプレイという意味では「beam」的でもある。家庭に入る余地の形状としては、ギリギリのラインであろう。もう少し大きかったらさすがに米国でもアウトだろうし、日本に入るならもう一回り小さくてもいい。

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