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Amazonのロボット「アストロ」、日本の家庭に居場所はある?小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)

» 2021年10月05日 08時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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日本市場の特殊性

 セキュリティ機能がキラーソリューションとなっている「アストロ」は、日本で需要があるだろうか。

 家の構造、さらには敷地の構造、もちろん犯罪の発生率から種類まで事情が大きく異るわけだから、ローカライズは単に日本語でサービスが動くようになるというだけでは済まない。

 ただ、遠隔からの見守り機能は、日本の社会では一定の市場性があるだろう。2020年以降のコロナ禍によって、高齢者向け養護施設で多くのクラスターが発生した現状からすれば、年をとったら施設にいけば安心というわけでもなくなってきている。

 また医療機関の逼迫により、自宅療養を余儀なくされた人も多く、感染の波は回を重ねるごとに大規模になってきている。今後、地域によってはコロナではない病気なのに入院できないといったことも起こりうる。

 自宅療養や自宅介護となった場合、物理的な身の回りの世話は出張ヘルバーや訪問介護に頼ることになるが、それ以外の時間帯に家の様子を誰がどう見守るかは、大きな課題となる。

 これまでも、スマホやタブレットによる見守りソリューションは存在した。しかし病院の病室のように限られた空間ではどうにかなっていたものが、自宅となればどうしてもカメラ1つでは死角ができる。家中に監視カメラを設置するより、カメラが動いたほうが効率が良い。

 そう考えれば、高齢者や病人の自宅介護にアストロはアリなのではないか。これまでITソリューションの一部として遠隔医療はあったが、まだ一部の地域で限定的に使われているにすぎず、大きなソリューションにはなっていない。もし「アストロ」を自治体や医療機関から貸し出しという道が検討できるなら、個人負担も軽くなるだろう。助成金が出るという道も考えられる。

 これまでホームロボットは、「家事を代行してくれる」という点に主眼が置かれていた。だが移動による見回り、見守りといった用途は盲点だったのではないだろうか。

 市場性があると分かれば、ロボット掃除機を得意とする中国メーカーがあっという間に追い付いてくることは考えられる。常に米中のはざまに立たされるわれわれとしては、中国メーカーとAmazonのどっちに安心を預けられるかの選択を迫られることになるかもしれない。

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