このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米スタンフォード大学の研究チームが開発した「Optimizing exoskeleton assistance for faster self-selected walking」は、人の歩行速度を約40%向上できる、足首に装着する外骨格システムだ。
日常的な歩行速度は、早歩き(歩行における最高速度)に比べて遅いのが一般的だ。早歩きはエネルギー消耗が大きく、その分疲労するからだ。このトレードオフを軽減し、早歩きを効率的にサポートするのがこの外骨格システムだ。
プロトタイプはひざ下から足首にかけて靴の上から装着する形式で、ケーブルを介して後ろのモーターに取り付ける。着用者のかかとをケーブルで上向きに引っ張り、地面から押し出すときにつま先が下に向くようにする。
健康的な成人10人の被験者に対して、自走式トレッドミル上を歩いてもらう実験を行い、呼吸計を用いて測定した呼吸ごとの酸素消費量と二酸化炭素生成量から代謝率を算出した。さまざまなモードで実験した中で、各被験者の歩行速度に最適化したトルクパターンを適用したモードが一番良好な結果を示した。
被験者によってバラつきは出たものの、システムを装着していない、普通の靴での歩行よりも、システムを装着し、最適化されたトルクでアシストされながら歩行した方が平均して42%(増加幅は6%から91%)速かった。歩行スピードが速くなっただけでなく、エネルギー消費量も減少した。
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