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地震発生時の帰宅手段、シェアサイクルに脚光 実はリスクも? 各社対応から読み解く(1/3 ページ)

» 2021年10月28日 08時00分 公開
[島田純ITmedia]

 10月7日の夜に関東地方で発生した地震により、東京都足立区で最大震度5強を記録。地震により首都圏の鉄道は大規模にストップしたため、夜遅い時間帯にもかかわらず自宅に帰ることができない、いわゆる帰宅難民を救う手段として、シェアサイクルが脚光を浴びた。

帰宅難民を救う足としてシェアサイクルに脚光が

 実際に地震が発生したその日、シェアサイクルで帰宅した人も少なくないだろう。SNSには、湾岸エリアのポートにシェアサイクルが大量に返却されている様子が投稿された。

 普段からシェアサイクルを通勤や通学などに使っている方もそうでない方も、遅い時間帯に普段通りの移動ができない中でシェアサイクルによって効率的に移動できた経験をすると、心強い移動手段として記憶に残るだろう。

 シェアサイクル事業者側も、地震の発生により影響があったと思われる時間帯の利用料金について、一部を減免するなどの支援措置を行っている。こうした措置から、実際にシェアサイクルで帰宅した方も、今回は運良く難を逃れた方も「電車が止まっても、シェアサイクルで帰れば大丈夫なのでは?」と認知した方も少なくないかもしれない。

 筆者自身も、地震によって電車が止まっている状況を知り、「シェアサイクルを使えば、帰宅の助けになるかもしれない」とSNSで発信したが、実際のところ災害発生時のシェアサイクルの利用はどうあるべきなのか? 冷静に考えてみたい。

強い揺れの後、安全に移動できるのか?

 最初に、7日の夜に電車が運休となった理由を思い出してほしい。シンプルに言えば「地震による揺れが大きいため」というのが直接的な理由だ。では、地震による大きな揺れが発生した際に、シェアサイクルで移動することは、安全かつ適切といえるだろうか?

 幸いにも、先日の地震によって道路や路面に大きな被害は発生しておらず、大規模な通行止めや道路の損傷によってけが人が発生したという情報も確認されていない。もし、被害にあわれた方がいらっしゃったらおわびを申し上げたいが、大ざっぱにいえば「道路には甚大な被害は無かった」といえるだろう。

 だが、地震が発生したのは夜遅い時間帯であり、道路に甚大な被害がないことを正確に確認できたのは、翌朝以降だろう。東京都内の主要な道路は、夜間でも他の都市の道路よりも明るく、自転車でも比較的安全に走行が可能ではあるが、大きな揺れが発生したエリアを通行する際は、移動手段を問わず、道路状況について普段よりも注意すべきである。

事業者による支援措置は「電車が止まってもシェアサイクルで帰宅を!」ではない

 冒頭で紹介した通り、今回の地震ではシェアサイクルの運営事業者各社が、利用料金の減免などの支援措置を発表した。帰宅難民を救う手段として、シェアサイクルが脚光を浴びたのはこうした事業者の支援措置も理由の一つだろう。実は、こうした支援措置は2018年8月に発生した大阪北部地震でも同様に行われた。

 大阪北部地震の発生後、ドコモ・バイクシェアは延長料金を無料とする他、エリア外に移動した自転車の回収に伴う費用を利用者に請求しない形で支援。地震発生の翌日にこの支援措置を発表した。OpenStreetでは、地震が発生したエリアのステーションからのレンタル料金を数日間無料とした。

大阪北部地震(2018年8月)の発生後、OpenStreetのHELLO CYCLINGも地震発生エリアのステーションを数日間無料に

 ドコモ・バイクシェアを例に紹介すると、大阪北部地震や今回の地震に伴う支援措置の発表タイミングは、地震発生の翌朝に行っている。同社の担当者によると、こうした支援措置を実施するかどうかは、震度やマグニチュードによって一律に決めているのではなく、災害の規模や影響に応じてその都度検討し、決定しているという。

ドコモ・バイクシェアの支援内容
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