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地震発生時の帰宅手段、シェアサイクルに脚光 実はリスクも? 各社対応から読み解く(3/3 ページ)

» 2021年10月28日 08時00分 公開
[島田純ITmedia]
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スマホや自転車の「通信」は正常に稼働するか?

 地震や大雨などの自然災害が発生すると、その影響で携帯電話の基地局に電力供給ができなくなったり、基地局の設備や通信用のケーブルで物理的に切断されるなどのトラブルにより、通信環境にも影響を及ぼす可能性がある。

 関東地方で震度5強を記録する地震では、直接的に通信インフラに大きなトラブルは発生しなかった。この点、携帯電話各社のインフラはかなり強靭(きょうじん)であり、災害時にも頼れるインフラであることは間違いない。

 一方で、翌週の14日夕方に発生したNTTドコモの通信障害の影響で、シェアサイクル用の自転車の通信用にドコモ回線をバックボーンに使う、ドコモ・バイクシェア系のサービスでも自転車のレンタルや返却が行いにくくなる現象が発生した。

NTTドコモの通信障害がドコモ・バイクシェアにも影響した

 NTTドコモ以外の回線を使っているユーザーでも、ドコモの通信障害により、そもそもスマートフォンなどの通信手段が正常に動作せず、アプリを使ったシェアサイクルのレンタルや、ポートの位置を探すためのアプリが利用できなかった……という方もいるだろう。災害発生時には、通常時と比べて通信環境に何らかのトラブルが発生する確率も高くなる。

 シェアサイクルや電動キックボードなど、通信に依存するサービスを利用する場合は、「どうしてそのサービスが動くのか?」を普段から理解しておいた方が良いだろう。

「震度5強」より強い本震が発生したら?

 7日に震度5強を記録する地震が発生した後、幸いにも本稿の執筆時点で"本震"といえるような地震は発生していない。だが、もし「震度5強」のあとに、より強い本震が発生していたら、安全に帰宅ができただろうか?

 内閣府の防災情報では、外出中に大地震が発生した際の基本行動として「むやみに移動を開始しない」ことを推奨している。地震発生後は、建物の倒壊や規制などの理由で道路が通行できなくなり、通行できる道路に歩行者や自動車が集中して大渋滞になることと、救急・救助活動などの緊急車両が多数通行するためだ。

 大地震の発生後、多数の人が移動すると命を救うための緊急活動の妨げととなり、本来なら助かる命を救えなくなる、集団転倒が発生しやすくなるなどのリスクをあげ、大地震が起きたときは安全な場所にとどまることが基本としている。

 とはいえ、今回の地震(最大震度5強)は首都直下型地震で想定されるほどの規模ではなく、建物の倒壊や、大規模な道路の通行規制は無かった。2011年の東日本大震災では、都内23区のうち8つの区で震度5強を記録したが、今回の地震で5強を記録したのは都内では足立区のみ。

 こうした情報や、体感震度がそれほど大きく無かったこと、余震が多発していなかったことなどを理由に、帰宅を判断した方も多数いるだろう。筆者は今回の地震が発生した際に既に在宅していたが、もし外出していたら、おそらく子どもが待つ家へと急いだであろう。

 災害が発生しても帰宅しなければならない理由は、小さい子どもが家で待っている、介助が必要な親が家で待っている、工場や倉庫などで火災が発生している可能性があるなど、家や会社へと急ぐ事情は人それぞれだろう。こうした個別の事情を無視して、一緒くたに「その場に止まるべき」が最適解なのか、この記事ではその点は掘り下げない。

 少なくとも、大地震が発生した際のシェアサイクルでの帰宅は、安全が確認できた後に徒歩で帰宅するのと比べてリスクが大きいことを利用者側は理解しておくべきであり、地震やその他の災害の発生時などには、利用者の安全を最優先にした措置や呼び掛けが事業者側には求められる。

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