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地震発生時の帰宅手段、シェアサイクルに脚光 実はリスクも? 各社対応から読み解く(2/3 ページ)

» 2021年10月28日 08時00分 公開
[島田純ITmedia]

 シェアサイクルの運営事業者は「電車が止まってもシェアサイクルで帰宅を!」と、積極的に自社サービス利用を推奨しているわけではない。これらの措置を発表するタイミングは地震による直接的な影響が落ち着いたタイミングであり、支援措置を事前に発表することで「延長料金が免除されるなら、シェアサイクルを使おう」と、シェアサイクルによる移動ニーズを喚起“しない”ように注意しているように見受けられる。

 背景には、災害によって自転車の走行が危険な状態となることがある他、東日本大震災の発災後のように、電車が運休となったことで大量の帰宅者が車道にはみ出して移動するケースもあり、こういったケースでは、自転車での走行が危険となってしまう。

 シェアサイクル事業者が、災害発生時の代替手段として支援措置などを積極的にアピールしていないのは、災害の発生によりシェアサイクルでの移動が危険になる可能性があることや、帰宅難民が大量に発生してしまうと、自転車の台数やエリアなどが十分あるとはいえないことが理由だろう。

 東京都内を例に紹介すると、都内のドコモ・バイクシェア系シェアサイクルの台数は約9500台だ。シェアサイクルはそのサービスの性質上、利用者が利用したいと思っても、近くのポート(置き場)に自転車が無ければ利用することができない。

ポートに自転車が無ければ利用できない。(写真は大阪市の「大阪バイクシェア」)

 現実的な試算では無いことは前置きしつつも、仮にドコモ・バイクシェアの東京エリアの自転車が全台、帰宅難民のために使えたとしても、台数ベースで利用できるのは9500台に限られる。

 シェアサイクルは「朝は家から駅へ、夜は駅から家へ」の通勤・通学などの利用が多いが、利用者が多い時間帯に使おうと思ったら、近くのポートには自転車が残っていなかったり、残っていてもバッテリー残量が少ない車両だった……という経験をした方は少なくないだろう。

レンタルできる自転車台数の不足や、バッテリー残量が十分に無いことは平常時からある

 地域や事業者によってサービスレベルは異なるが、平常時でさえ「乗りたいときにいつでも、確実に利用できる」サービス水準とはいえないと感じることも多く、公共交通のトラブルによって需要が急増すると、台数不足や返却先ポートで自転車があふれてしまうリスクは大きくなる。

平常時でも返却先ポートに自転車が集中し、あふれてしまうことも

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