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» 2021年10月29日 07時40分 公開

スマホを持って移動するだけでポイント付与 「Miles」が成り立つのはなぜ? 社長に聞いた

スマートフォンを持って移動するだけでポイントがたまる「Miles」が日本上陸した。Milesはポイントシステムを使った提携企業への送客サービスとしてB2Bビジネスを展開している。

[谷井将人,ITmedia]

 スマートフォンを持って移動するだけでポイントがたまる「Miles」というアプリが10月20日に日本上陸した。米国では2019年のリリースからこれまで140万人に利用され、日本でもすでに30万ダウンロードを記録し初速は好調だ。Milesは無料アプリで、ユーザーへの課金は一切無いが、一体どこで収益化しているのだろうか。ビジネスの仕組みを日本法人の高橋(高ははしごだか)正巳社長に聞いた。

photo Miles

 Milesは名前の通り、ユーザーがアプリをインストールしたスマホを持って1マイル(1.609km)移動すると1ポイント付与するアプリ。移動手段によりポイントの取得率が変わる仕組みで、電車は3倍、徒歩は10倍など、より環境に優しい移動手段ほど倍率が上がる。移動手段はスマホのセンサーから得られるデータなどを基にAIが自動で判定する。

 ポイントは、ファミリーマートや日本航空(JAL)、JRなどの提携企業の割引券やAmazonギフト券などと交換できる。ポイントカードやアプリはユーザーが買い物をした際に、決済額に応じて数%を還元するのが一般的だが、Milesは金銭のやりとりとは無関係にポイントがたまる。移動という行動に価値を付与するサービスともいえる。

 一方、ビジネスの視点で見るとMilesは法人に向けた顧客送客サービスと捉えられる。

ビジネスモデルはシンプル

 Milesアプリには、提携企業のクーポンが掲載される。ユーザーは徒歩や公共交通機関を利用してポイントをため、クーポンと交換し、提携企業の店舗やECサイトでの買い物に使う。Milesは送客が成功した時点で提携企業から手数料を得る成功報酬型のビジネスだ。

photophoto ポイントはクーポン券やギフトカードと交換できる

 ポイントは“最初の1歩”を作り出すことにある。決済額に応じてポイントを付与するシステムは、商品やサービスの購入が前提で、何かを買わなければ次の購買のモチベーションになるポイントは発生しない。一方、Milesは日々の移動の中で勝手にポイントがたまり、いつの間にかクーポンが手に入るという仕組みをアプリユーザーに提供することで、提携企業への足掛かりを作るのが目的だ。

 この思想がアプリの設計にも現れている。Milesは位置情報を基に移動距離を計算してポイントを付与するため、スマホから位置情報を取得する必要がある。アプリを起動している最中だけデータを取ることもできるが、高橋社長は「われわれが想定しているUX(ユーザー体験)としては、常に位置情報を取得できるようにしてほしい」と話す。「今から移動するぞ」と意気込んでアプリを立ち上げ、データを記録するのではなく、いつの間にかポイントがたまっているという体験を提供したいという。

 また、特典の取得回数にもこだわりがある。Milesに掲載されるクーポンなどは、特別な事情が無い限り1つのクーポンにつき1回しか交換できない。何度も同じ特典を取得して同じ店舗に通うよりも、新しい店舗に向かうきっかけを何種類も提供する方が、アプリの思想にマッチしているからだ。

初の海外進出に日本を選んだ理由は「ポイント好き」?

 もう一つのビジネスが、SDK(ソフトウェア開発キット)の提供だ。Milesはシリコンバレー発のスタートアップとしてこれまで米国で事業を展開してきており、日本が初めての海外進出だ。

 日本を選んだ理由について高橋社長は「日本にはポイントカードを積極的に使う文化があり、Milesとの相性がいいという判断になった」としている。米Milesの創始者ジガー・シャー氏が数年前、日本を訪れた際にドラッグストアで買い物をしたところ「○○や○○のポイントカードはお持ちですか?」と詳しく聞かれて驚いたのだという。

 日本企業とコミュニケーションを取る中で、JALやあいおいニッセイ同和損保、JR東日本などと実証実験をやることになり、今回の日本上陸につながった。

 MilesはJALに、移動をポイントに変える基幹システムをSDKとして提供しており、実際にJALのアプリ内でMilesのシステムが動作している。

photo JALの「HAWAIICO」

Milesは安心して使えるか

 Milesのアプリについて、Twitter上では「位置情報を売っている」「検索履歴も抜き取っている」「退会機能が無く怪しいアプリなのでは?」との懸念の声もある。

 位置情報は単体では個人情報に該当しないが、名前などの情報と結び付くとプライバシーの侵害につながる高度な情報になるため、慎重な扱いが求められる。Milesは取得した位置情報をポイントの計算のみに使っており、提携企業への個人情報の提供は一切していないという。情報は日本国内のサーバに保管されている。

 検索履歴についても、アプリ内でのクーポン検索機能に入力されたデータを、クーポンのレコメンドのために取得しており、こちらも外部への提供はない。退会については、データの削除など元に戻せない作業もあるため、アプリ上の機能としてではなくカスタマーサポート窓口で受け付ける。高橋社長は「日本の人々にも安心して使ってもらえるはずです」と話す。

 日本の文化とマッチするとして上陸したMilesはどのくらい普及するか。また、金銭の絡まないポイントアプリとクーポンを使った顧客送客でどこまで戦えるか、今後の動向に期待したい。

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