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全社員6人がテレワークへ移行したソフトウェア会社に起きた実録トラブル集(1/3 ページ)

» 2021年11月02日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 アクタスソフトウェア(東京都新宿区)の坂下秀 代表取締役(以下、坂下氏)が発表した「コロナ禍において,小規模ソフトウェア会社での在宅勤務移行時に発生したさまざまな事象の報告」は、社員全員がテレワークを余儀なくされたソフトウェア会社が経験した多様な事象を時系列に記載した報告書だ。

 同社は取締役含め社員6人、ソフトウェア開発を主な業務とする2003年創業の小さなチームだ。そんな小規模な会社が新型コロナウイルスの拡大に伴い、2020年初めからテレワーク環境に移行し、2021年初めには全従業員が在宅勤務となった。

 決定当初の坂下氏は、技術面からは在宅勤務の実施に大きな問題はないと考えていた。自分で事務所のネットワーク管理を行っており内容を把握していたこと、以前から出張先や自宅から業務ができるような仕組みをある程度用意していたこと、社員が6人と少ないことが理由だ。

 しかし実際に実施してみると、技術的な問題や技術の範囲を超えた、想定していなかった問題が多数発生した。

photo 2021年1月28日に撮影した事務所内の様子

事務所内PCにログインできない

 業務であるソフトウェア開発をテレワークで行うに当たり、事務所内と同等の業務とセキュリティが可能なVPN経由で事務所のPCを各社員の自宅PCからRDP(Remote Desktop Protocol)で操作することにした。ソフトウェアのビルドは事務所のPC内にある仮想マシンで実施。

 しかし、事務所内のPCにログインできない問題が各社員から半年間で5回ほど発生した。その場で原因が分からなければその都度、出社を余儀なくされた。1日のうちに複数の社員から接続ができない旨の連絡を受けた日もあり、その日は自宅と事務所を行ったり来たりと非常に手間がかかった。

 ログインできない原因は、例えば、PCの電源がリモート側からシャットダウンされていたことや、BSOD(Blue Screen of Death)の画面のまま止まっていたこと、事務所PCの内蔵ディスクが物理的に故障したこと、無線LANとの接続が切れておりDHCPが動作していなかったことなど。以前のオフィス勤務ならば原因を早急に見つけ対処できることばかりだ。

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