ITmedia NEWS > 社会とIT >

全社員6人がテレワークへ移行したソフトウェア会社に起きた実録トラブル集(3/3 ページ)

» 2021年11月02日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

法人向けインターネットバンキング用PCが故障

 事務所に置いてある、事務担当者が使用する法人向けインターネットバンキング用PCが起動しなくなった。社員への給与や事務所の家賃振り込みを行っているため早急の対処が必要だ。

 インターネットバンキング用PCのSSDを使っていないPCに差し替え解決したが、今後のことを考え、新たにPCを用意してインターネットバンキング用の設定をしたいところ。しかし、このシステムはクライアント証明書を利用しているためPCが制限されており、他のPCへの移行は慎重に行わなければならない。失敗すると、余計な時間と労力がかかる。

 そのためPCの入れ替えは行わず、事務担当者の自宅PCで新たにユーザー登録し、インターネットバンキングが利用できるようにした。登録時にハードウェアトークンを必要とし、ひと手間かかった。

 会計管理ソフトウェアについても、特定のPCにのみインストールできる仕様なため、事務所のPCから事務担当者の自宅PCにインストール先を変更した。

在宅勤務前にやっておいてよかったこと

 在宅勤務前にやっておいて(たまたまやっていて)よかったことは、会社名義のクレジットカードを契約していたことと、クラウドベースの勤怠管理システムを導入していたことだ。

 会社名義のクレジットカードを契約する場合、支払いは会社の銀行口座であるため銀行印の押印のために出社しなくてはならないし、発行されるまで少なくとも1カ月はかかる。クラウドベースの勤怠管理システムを導入するに当たっても、就業規則の整備や法令との整合性の確認、社員の同意など3カ月程度要する。

 在宅勤務前の各種物品などの購入は、月末請求に応じてその金額を銀行振込していたが、これをクレジットカード決済に移行。クラウドベースの勤怠管理システムは、在宅勤務に変わっても社員の労務状況を容易に管理できたため役に立った。

最後に

 特定のPCにだけインストールできるソフトウェアの取り扱い、インターネットバンキング用PCの保守、事務所にある機材の故障、遠隔によるさまざまな操作、郵便で届く書類の処理、押印やFAXなど、在宅勤務への移行に当たり多くの対処や改善が必要だった。

 ログインできないトラブルも多発し、自宅から対処できない場合は何度も出社をしなければならなかった。今後もトラブルがあれば出社しなければならないし、自宅郵送に切り替えられなかった書類を引き取るために定期的な出社が必要となる。

 今回の件で、会社としてオンプレミスのサーバを維持してきたが、在宅勤務での管理が難しいと分かり、クラウドベースの作業環境に移行しつつある。

 事務所内の社員向けPCとディスプレイを社員の自宅に送付する。AWS(Amazon Web Service)との契約した上でメールはAmazon WorkMailへ移行する。ファイル共有は開発者向けに利用契約がたまたまあったMicrosoft 365に含まれているOneDrive for Business(1人当たり最大で5TB)に 。リポジトリについては以前から開発に一部利用していたGitHubにするなどの作業を行った。

 複数のクラウドサービスを利用するようにしたのは、例えば全てを特定のクラウドサービスに集中すると、そこが利用できなくなると業務が継続できなくなるためである。在宅勤務への移行とともに、クラウドベースの作業環境への移行も余儀なくされた。

※この記事と本文中の写真は、情報処理学会の研究会報告 研究報告インターネットと運用技術(IOT)2021-IOT-54巻 3号1 - 8ページ 発行年2021-07-02 を引用している

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.