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ビデオ編集が「未経験者にも手早く稼げる人気の職業」だって? YouTuberにも人気のビデオ編集ソフト御三家の方向性を探ってみた小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2021年11月08日 09時56分 公開
[小寺信良ITmedia]

専用コントローラーが大幅プライスダウンの「DaVinci Resolve」

 もともとはフィルムテレシネ用のカラー調整システムだったのだが、Blackmagic Designが買収してソフトウェア化した後は次々と機能が追加されていき、普通だったら別ソフトになるような機能まで全部1つにまとめてあるのが「DaVinci Resolve」である。機能が限定された無償版の「DaVinci Resolve」と、フル機能で有償版(3万9578円)の「DaVinci Resolve Studio」の2つがある。

 各機能は「ページ」に分けられており、切り替えると全然違うUIが出てくる。1つのプロジェクトを、作業に応じてページに切り替えながら仕上げていく、というフローになっている。編集機能としては、スピード勝負の「カット」ページと、従来型編集ソフトの「エディット」ページの2つがある。

 先日までキャンペーンで、DaVinci Resolve Studioを購入すると「Speed Editor」というコントローラーが無償で付いてきたが、10月28日に価格改定があり、今度はSpeed Editor(4万9478円)を買うとDaVinci Resolve Studioが付いてくるという、逆バンドル状態となった。

 10月22日に新バージョン17.4が公開され、M1 ProおよびM1 Maxへの対応強化が図られた。現在はマイナーバージョンアップ版の17.4.1が公開されている。

 17.4のポイントは多いが、M1 Pro/M1 Maxでは作業スピードが最大5倍高速化を大々的にうたっている。新MacBook Proに搭載されたHDRディスプレイを使った、HDRクリップの表示にも対応した。12K Blackmagic RAWファイルのデコードが3倍以上、H.265のレンダリングが1.5倍など、既存ユーザーにもメリットが多い。

photo M1 ProおよびM1 Maxへの対応強化を大きくアピール

 専用コントローラーのSpeed Editorは、一部の機能はエディットページでも使えたが、フル機能はカットページでなければ使えなかった。だが17.4では、Speed Editor最大のポイントであるマルチカメラ切り替え用ボタンもエディットページで動くようになり、徐々にソフトの共有化が図られることとなった。

 なおエディットページ用には別のコントローラー「エディターキーボード」があり、以前は12万円以上もする高級品であったが、今回の価格改定により7万4778円に引き下げられた。

 DaVinci Resolveは、色補正が必須のデジタルシネマで積極的に使われるケースが多い。単にカラーグレーディング機能が優れているというだけでなく、専用のハードウェアコントローラーが豊富に用意されているからだ。今回の価格改定でコントローラーの価格が下がり、より導入しやすくなった。また編集についても専用コントローラーが用意されている辺り、ポストプロダクションの現役編集者や経験者、専業者に注力しているソフトといえる。プラットフォームも、Mac、Windows、Linuxに対応しており、幅広い環境で動作する。

 ポストプロダクションでは、いろんな技術担当者が違うページを使ってそれぞれの専門作業をしながら1本の作品に関わっていくというワークフローになるが、クラウドを使ったアノテーション機能といった、いわゆる「申し送り機能」が弱かった。

 17.4では、Dropboxが新たに提供する「Dropbox Replay」に対応した。DaVinci ResolveからDropbox Replayに動画をアップロードし、Dropbox Replay上でアノテーションを加えると、そのコメントがDaVinci Resolve側のタイムラインにマーカーとしてアップデートされていく。

photo Dropbox Replay上でアノテーションを加えると……
photo DaVinci Resolve側にも反映される

 チームで動くメンバー、特にテレワークでつながっているチームにとってはようやく、という機能追加である。Adobe Premiere Proも同様にDropbox Replayに対応する。

 また、タイムライン上のマーカーをYouTubeのチャプターとして利用できる機能など、これまでハリウッド映画を中心とした展開から、ネット動画クリエイターまで幅広く取り込もうとしている。

 すでに前バージョンの時代から独自のニューラルエンジンを搭載しており、顔認識による自動位置調整や、削除クリップの自動選択といった用途に使われてきた。ただこのエンジンを今後どう発展させていくかについては、まだあまりビジョンが明確になっていない。

 無償版でも相当なことができるので、無償版編集ソフトとしては最も高機能だといえる。無償版で編集を覚えればプロとしての道も開ける、そういう思いでハイエンドな無償版が公開されており、業界入りを目指す人にはぜひマスターしてもらいたいソフトである。

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