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ビデオ編集が「未経験者にも手早く稼げる人気の職業」だって? YouTuberにも人気のビデオ編集ソフト御三家の方向性を探ってみた小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2021年11月08日 09時56分 公開
[小寺信良ITmedia]
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Adobe Senseiでどんどん進むPremiere Pro

 10月27、28日の両日、オンラインイベントAdobe MAX 2021が開催された。それに先駆けて26日、Premiere Pro 22.0がリリースされた。前バージョンは15だったのだが、オーディオ系のソフトとバージョンをそろえるために一気に22にカウンターが上がった。今後映像製作関連ソフトは全て同じバージョンで進んでいくことになる。

 新MacBook Pro発売直後のリリースとなったが、M1 ProおよびM1 Maxへの対応はそれほど強く打ち出してはいない。もともとM1対応は早かったし、Windowsでのシェアも高いので、Appleに強く寄せたイメージにしたくなかったのかもしれない。

 Premiere ProはCreative Cloudというサブスクサービスで提供されており、単体の買い切りではない。個人向けとしては月額2728円の単体プランのほか、複数のソフトが使用できる月額6248円のコンプリートプラン、法人プランなど、さまざまなプランがある。ただし単体プランの月額2728円は、1年間のプランを毎月分割して支払う額で、契約としては1年契約であるため、途中解約は違約金が発生する。

 Premiere Proは、前バージョンで音声書き起こし機能を内蔵するなど、クラウドとAIを使って大きく機能を飛躍させた。今回もこの機能をブラッシュアップし、13の言語でポップカルチャー用語の変換精度や日付、数字にも強くなった。また読み込み時と書き出し時にカラースペースを自動で判別する、使ってないトラックやギャップ、エフェクトなどを自動的に削除するなど、これまでユーザーが自力で管理しなければならなかった部分の自動化に踏み出している。

 まだβ版の機能だが、Adobe Sensei(AIによる制作支援システム)を搭載したリミックス機能は面白い。ある尺の動画に対して音楽を当てる場合、従来はイントロをカットする、間を抜く、最後はフェードアウト、といった処理を手動で行う必要があった。音楽に詳しい編集者であれば、リピート部分をカットして間を詰めて、楽曲の終わりのアウトロ部分を動画の終わりにピッタリ合わせるといった編集もできるだろうが、通常こうした処理は音効さん(音響効果の担当者)の仕事である。

photo クリップに対して音楽が長い場合、手動で編集が必要だった

 この音楽編集を、Adobe Senseiを使って自動編集してくれるのが、リミックス機能だ。人が編集すると、小節の頭など区切りのいいところでカットするものだが、リミックス機能では小節や拍と関係ないところでさりげなく編集されるため、よく聞いても編集点が分からない。

photo リミックス機能を使うと、イントロとアウトロの間を詰めて時間ピッタリに編集してくれる

 これまでAdobe Auditionに搭載されていた機能だが、Premiere Proに試験的に搭載されることとなった。Adobe SenseiはPhotoshopやLightroomといった写真用ソフトでも多彩な機能を実現しており、今やAdobeの核となる技術である。

 Premiere Proは以前から使用中に再生パフォーマンスが低下する問題が指摘されており、キャッシュのクリアなどさまざまな解決策が公開されているが、本来ならばユーザーが何もせずに最適化してくれるのが一番である。そこにAdobe Senseiのパワーが使えないのが残念だ。

 Premiere Proは、今のノンリニア編集の基礎を作ったソフトであり、使い勝手にあまり特有のクセがないソフトだ。編集ソフトの中ではいち早くAIを取り入れ、面倒な手作業の自動化へと舵を切った。パーソナルユースでもプロダクションユースでも行ける、MacでもWindowsでも行ける、対応フォーマットも多いという万能感がある。

 サブスクなので、大きな出費は抑えられるが、結果的には1年で3万円以上を毎年払い続けることになる。そういう意味では、決して安いソフトではない。月に1回も編集しない時があるみたいな人には、コストが合わないだろう。

 自分が覚えやすいソフト、よく使う機能がアクセスしやすいソフトが一番使いやすいのも事実だが、1つのソフトをマスターすれば他のソフトも理解しやすくなる。乗り換えもそれほど苦にはならないはずだ。1つのソフトにこだわるのではなく、アップデートの具合を見ながら2〜3年程度で乗り換えを検討していくみたいな使い方が、一番進化のメリットを享受しやすい使い方ではないかと思う。

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