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「仮想現実で生きる人が増えていく」――アドビCPOが語る、テクノロジー市場の未来予想(1/3 ページ)

» 2021年11月09日 08時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 アドビの年次イベント「Adobe MAX 2021」が、10月27日から28日までの2日間、オンラインで開催された。参加は無料で、基調講演など多くのセッション映像は、イベント後もオンデマンド視聴可能になっている。

Adobe MAXは2021年もオンライン開催となった

 Adobe MAXの開催に合わせ、同社のCreative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)であるスコット・ベルスキー氏が、日本のジャーナリストとのグループインタビューに答えた。テーマの中心は「クラウド化」と「3D」。これからのアドビを支える大きな技術軸である。

コロナ禍が「コラボレーション」と「クラウドドキュメント」を加速

 Adobe MAXは多くのデザイナーや開発者、メディア関係者が参加する「アドビのお祭り」のようなイベントだ。だが、新型コロナウイルスのパンデミックの中、2020年に続き21年もオンライン開催となっている。

 このコロナ禍の中、アドビの方向性はどう影響を受けたのだろうか?

 ベルスキーCPO:顧客の多くは、遠隔地で分散して作業をするための簡単な方法を求めていました。とはいうものの、COVID-19の流行は巨大な強制力を持っており、全てのチームが突然、一緒に創造するためのより良い方法を見つけなければならなくなり、コラボレーション機能に関するロードマップの優先順位に影響を与えました。

アドビCPOのスコット・ベルスキー氏

 この2年間は非常に困難なものであり、私たちの活動や仕事のやり方も大きく変わりました。そして、自分たちが使いたい、顧客のために作りたいと思うツールの種類も変わりました。今回発表した機能からは、これらの取り組みに関する初期の成果を見ることができます。

 アドビは今回、同社のクラウドサービスである「Creative Cloud」のコラボレーション機能をさらに強化した。Web上で地域・時間をまたいで作業するための「Creative Cloud Web」が登場し、その中には、プロジェクト単位で素材や資料などを集中管理できる「Creative Cloudスペース」や、レイアウトやデザインなどを、レビューしながら共有できる「Creative Cloudカンバス」が用意されている。

Webの上からのコラボレーション機能が強化された

 特に注目は、Web版のPhotoshopおよびIllustratorが発表になったことだ。コラボレーション相手と素早く作業をするために、限定的ながらWebだけで閲覧・加工ができるようになっている。

ついにWeb版のPhotoshopも発表に

 こうした技術では、クラウド上で各アプリで制作したデータを活用する「クラウドドキュメント」の技術が必須になる。アドビの場合、2018年に発表、2019年にローンチした「iPad版Photoshop」から、データのクラウドドキュメント化に着手している。Web版もこうした「クラウドドキュメント化」の先にあるものだ。

 ベルスキーCPO:クラウドドキュメントは、私たちにとって旅のようなものでした。

 私たちは、全ての製品をクラウド化したいと考えていました。Photoshopのような製品をiPadで使えるようにして、どこにいても仕事ができるようにしたかったし、Web上で製品を使いたいと考えている人もいるでしょう。

 実行するのはとても大変でしたが、クラウドドキュメントは、それを実現するために、私たちが最初に解決しなければならない課題でした。ファイルをローカルに保存するデスクトップ製品に慣れ親しんできた当社にとって、これは非常に大きな変革でした。

 私たちはクラウドドキュメントを活用してWebアプリケーションを実現することを計画してきました。そこにやってきたCOVID-19の危機は、私たちの取り組みを加速させました。

 製品がクラウド上に存在すれば、多くの可能性が開けると信じています。人々はより簡単に共同作業ができますし、クラウドでしか実現できない人工知能を活用して、ワークフローを改善することもできます。他のクラウドサービスやWebアプリケーションとの相互運用性も向上します。

 そのために、Creative Cloudの全ての部分が、時間をかけてクラウドドキュメント化されるべきだと考えています。

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