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相次ぐ車両内刺傷・放火 テロや犯罪に巻き込まれないためにできること、やってはいけないことデジタル防災を始めよう(2/2 ページ)

» 2021年11月09日 07時00分 公開
[戸津弘貴ITmedia]
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防災は、臆病なくらいがちょうどよい

 SNSなどで、逃げ惑う乗客の様子が投稿されたり、犯人らしき人物や警察官が確保している状況なども投稿され、ニュース映像でも同様のものが流された。そのおかげで詳しい状況が分かった半面、野次馬根性で撮影することで避難が遅れたり犯人を刺激したりする恐れもあった。組織的な犯行だった場合、組織の構成員が投稿者を特定して報復するといったこともありえるだろう。

 手元にカメラ付きのスマートフォンがあり、撮影(投稿)したい気持ちはあるだろうが、カメラを向けられた襲撃者が逆上して襲い掛かってくるかもしれないし、事故の状況を撮影するために近づいたら爆発などの事故に巻き込まれるという事態もありえる。先に述べた対テロの行動指針では、逃げたり隠れたりする際は携帯電話が鳴らないようにするなど、襲撃者に気付かれないよう行動することが奨励されている。

功名心による軽はずみな行動は「死亡フラグ」

 また、事件から数日たった現在、SNSの書き込みやWebの記事で、自分の安全を優先して逃げる人々を非難する書き込みや記事なども見られたが、「避難はしても非難してはならない」でも述べたように、状況に直面してその中で決断してとった行動を責めてはならない。

 避難して助かった人たちには「もっと良い対処ができたのではないか?」「他人を優先したほうがよかったのではないか?」など、自分が助かったことに罪悪感を持ったり、自分自身を責める「生存罪責感情(サバイバー ギルト)」を持つ人もいる。当事者でない人が、状況が判明してから「ああすればよかった」「こうすべきだった」などと「事後諸葛亮」を振りかざすのは控えたい。

 実話をもとにした映画「ハドソン川の奇跡」で、ハドソン川に不時着した機長の判断が誤っていた(空港に引き返せるというシミュレーション結果が出た)という主張に対して、結果を知っていてシミュレーションしたらそうなるが、状況が発生して瞬時に判断するわずかな時間を考慮すると不時着が最善だった(引き返すと判断の時間分で墜落となった)というエピソードがあった。

 こうすれば取り押さえられるとか、刃物を持った相手でも対処できる方法などを披露する人たちもいるが、そういった情報をむやみに拡散しないのもデジタル防災の心得の1つだ。

デジタル機器のメリットとデメリットを認識しよう

 電車など公共交通機関では、デジタル機器を使用しないことはないくらいに日常に浸透しているが、今回の事件を機に機器の特性を確認しておき、使用上の注意や安全な設定をしておきたい。

 ヘッドフォンやイヤフォンを使用していると、危険な状況に気付きにくいという警告は以前からあった。SNSに投稿された動画にノイズキャンセリングヘッドフォンをしていて事態に気付くのが遅れた人が映っていたことからも、それが実証された結果になった。

 ノイズキャンセリング機能をONにした状態でも、外音取り込みモードや外音取り込み比率を調整して、多少でも外音が聞こえる状態にしておくのがよいだろう。

 iPhoneやApple Watch(Series 5以降のGPS + Cellularモデル)などの緊急通報機能の使い方を覚えておくのもよい。Androidなど他のスマートフォンにも同様の機能がある。いずれも声が出せない状況でもボタンの操作だけで警察や消防などへの緊急通報が行えるものだ。

photo Apple Watchはサイドボタンを長押しすると緊急連絡にアクセスできる

事前の情報収集が、適切な行動につながる

 自分がよく使う交通機関に関しては、非常時の設備についても知っておくと良いだろう。東京メトロのWebページの「安全ポケットガイド」には、地震や火事などのトラブル時に取るべき対応や安全情報が記されている。

 また、可能な範囲で良いので、使用する電車など、乗り込んだ際に非常通報装置や消化器の位置などを確認しておくと良いだろう。駅や商業施設を利用する際にも、消火栓やAEDの設置場所を意識しておくだけでも初動に大きな差が出るはずだ。

 AEDや消火器、消火栓などの設置場所を把握して、パニックを起こさないよう行動するイメージを持っておいて、損はないだろう。

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