飛行機や電車、タクシー、シェアサイクルなどを組み合わせ、ひとまとまりのサービスとして移動手段を提供する概念「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)。その実現に向け世界的に取り組みが進む中、日本でも国土交通省が旗を振り、交通事業者やデジタルプラットフォーマー、自治体が参加して各地で実証実験を進めている。
国交省は日本でのMaaSを“日本版MaaS”と表現する。“日本版”とは一体どのような意味か。Uber Japanが主催するオンラインシンポジウム「MaaSが変えるモビリティの未来」から探ったところ、日本特有の事情と、それに基づく国内事業者共通の課題も明らかになった。
9月9日に開催されたシンポジウムには、Uber Japanの他、日本航空(JAL)やWILLER、国土交通省、東京大学という業界関係者が登壇。それぞれの立場から、日本版MaaSの現状と将来を議論した。
国土交通省の定義によると、MaaSとは「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済などを一括で行うサービス」のことを指す。
例えば、A地点からB地点までの移動で、地下鉄やバス、タクシー、シェアサイクルなど複数の移動手段が選べるときに、移動手段を組み合わせて提案したり、運賃や利用料をまとめて支払えたりするアプリはMaaSといえる。
MaaSの概念は、定額制プランを用意するフィンランドのスマホアプリ「Whim」をきっかけとして広まったものだ。ただし、MaaSの形態は必ずしも、スマホアプリに限られるものではなく、乗り放題でない場合もある。要するに、移動をスムーズにするためにIT技術を活用するものは、広い意味でのMaaSと捉えられる。
ただし、MaaSと一口に言っても、具体的なサービスは多岐にわたる。日本では交通事業者やIT企業などが実証実験を重ねている段階で、現実的な提供形態ははっきりしていない。
国土交通省の石川雄基さんは「MaaSの具体的には実現形態には国は口出しせずに、民間事業者に任せて行く方がスムーズに進むだろうと考えている。行政としては事業者の実情を踏まえつつ、データ運用など必要な場面でイニシアチブを取るべきだろう」と見解を示した。
国土交通省では「日本版MaaS」をコンセプトとして掲げ、交通やIT分野の各企業による実証実験を後押ししている。この背景には、今後数十年に渡って続く人口減少社会への危機感がある。
今後、超高齢社会の進展により、鉄道やバスなどの公共交通は存続が困難になる可能性がある。経営面に与える影響では、利用者の減少と、乗務員の労働力不足という二重の困難に直面するためだ。
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