そして、当然のように「ミミック」は、宇井野氏の次々と繰り出すアイデアによって進化し、深化し、アイテム数も増えていく。まず、白黒のマーブル柄だった初代ミミックのカラーバリエーションとして、セルロイドの筆記具で「金魚柄」と呼ばれている、赤と白のマーブル柄を発売。「南天」と名付けられた。続いて、赤と白にアセチロイドの透明部分も入って高級感が増した「コーラル」(サンゴ)、べっこう柄を現代風にしたようなアンバーとダークブラウンのマーブル柄の「パシフィック」が登場した。
その頃に、なんと、鉛筆補助軸なのにボールペンを使えるようにするためのボールペンユニット「オプションパーツJS」が登場する。
「ボールペンユニットは一種の保険として作りました。鉛筆補助軸なので当たり前なんですが、『鉛筆しか使えないんですね』という声も結構あって。防波堤的にボールペンも使えるようにしようと思ったんです」と宇井野氏。この頃、ちょうど三菱鉛筆の「ジェットストリーム」用の替え芯に4Cタイプのものが発売されたこともあり、4Cのリフィルが使えるこのボールペンユニットは、「ミミックでジェットストリームが使える!」と話題になった。
独SchneiderのBase Ball Rollerballのリフィルをミミックで使う方法が以前から公開されたりはしていたのだが、普通にキャップ式ボールペンとして好きなリフィルが使えることが、筆記具としてのミミックの可能性を大きく広げることになった。
「鉛筆補助軸なのにボールペンにもなる」という倒錯は、遊び心を維持することにもなり、ミミックは、誰にでも勧められる筆記具へと進化したのだ。ボールペンユニットを取り付けたミミックが意外にもカッコ良かったというのも、すんなりと受け入れられた理由の1つだろう。
この「鉛筆補助軸なんだから、サイズさえ合えば何でも入れられるのでは」という発想は現在も引き続き実験が続けられていて、非公開ではあるが、消せるボールペンを入れることも可能になっている。その気になればワコムのEMR方式を採用したスタイラスペンも入れられそうなのだけど、まだその実験は行われていない。
その後も、軸の素材をエボナイトやベークライトにしたものや、少し短くして携帯性を増した「ミミック・ショート」、さらに小型化して、首から下げられるようにしたアクセサリー的なモデル「ミミック・ズングリ」、なんと紙筒を使った廉価モデル「ミミック・サイリンダー」、軸の両方に鉛筆を差し込める2色鉛筆風の「ミミック・マイウェイ」など、そのバリエーションが増えていく。ちなみに、私が個人的に愛用しているのは、初代の「ミミック・ペンギン」、エボナイト軸の限定モデル、ミミック・ズングリの3種類だ。
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