このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米ジョージア工科大学と米カーネギーメロン大学、米ノースイースタン大学による研究チームが開発した「Duco: Autonomous Large-Scale Direct-Circuit-Writing(DCW)on Vertical Everyday Surfaces Using A Scalable Hanging Plotter」は、壁や窓などの面積が広い垂直面に大規模な電子回路を描くコンパクトなロボット描画システムだ。平面に単層または多層の回路を自動で形成し、対象平面を直接デジタル化する。
この研究では、日常の大規模な垂直面をスマート面として再構築するためのデバイスを提案する。小さな箱などが対象物であれば、ステンシルや手動で電子回路を構築できるが、壁などの大きな平面になると大掛かりで困難を極める。
そこで研究チームは、3つのインク(導電性インク、誘電性インク、クリーニングインク)を搭載したペンデバイスを開発し大きな平面への電子回路構築を試みた。このデバイスは、インクを切り替えながら垂直面の上に電子回路を描ける上、UV LEDヘッドで印刷されたインクを自動的に硬化する一連の流れを考慮した設計になっている。
広い平面を動き回って描く必要があるため、対象の平面には2つのアンカーとモーターを両側に設置し、中央のペンデバイスをベルトでつるすように接続する。モーターが駆動しベルトを締め付けたり緩めたりしながら、2次元平面上でペンデバイスを自在に制御する。
圧力センサーも整備されているため、対象平面は壁だけではなく、木やガラス、アクリル板、セラミックなど、多様な質感の素材にも描画できる。さらにオプションとして、レーザーで切断するヘッドも備えており、市販のレーザーカッターのようにプログラムした通りに2次元の切り抜きもできる。
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