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「ウチもメタバースに参入してみるか」を成功させる3つのポイント 日産の事例から探る(2/4 ページ)

» 2021年12月01日 12時25分 公開
[堀正岳ITmedia]

VR上でギャラリーもイベントも再現する

 日産自動車が今回メタバース参入の足掛かりとして制作したのが、VRChat上のワールドとして公開されたバーチャル・ギャラリー「NISSAN CROSSING」です。

 銀座に存在する実際の自動車ギャラリーのビルと内装を3次元モデルから忠実に再現するとともに、EV車両「アリア」も実際のCADデータ用いて詳細に作られたモデルが配置されています。

photo ギャラリーの外観

 ユーザーは現実のギャラリーに立ち寄る感覚で展示されている車両を見たり、2階のイベントスペースや奥のカフェコーナーで過ごすことが可能になっています。

 関係する建物だけがぽつんとVR空間上に配置されているのではなく、実際の銀座の仮想的な街並みが窓の外に見えるので、スクリーンショットを撮影していても「映え」ます。

photo ギャラリーの外には仮想銀座が見える

 魅力的なワールドを精力的に制作していることが見て取れますが、さらに面白いのはこのVR空間の利用方法です。

 企業がブースや商品といったものをVR上に展示した場合、その情報についてリリースを発信するだけというパターンがよく見られます。しかし「NISSAN CROSSING」の場合、ここがギャラリーであることを利用して、スタッフも来場者もVRChat上に集合する完全にVR上のプレスツアーが開催されました。

 VR上とはいえ、演出も進行も現実さながらです。例えば赤い布で覆われたビルが丸ごとアンヴェールされたり、執行役副社長の星野朝子氏が本人を3次元スキャンしたアバターの姿で登場してあいさつするといったサプライズもあり、メディア向けの熱心なプレゼンテーションが行われました。

photo ビルを覆う赤い布

 こうした取り組みも奏功して、バーチャルギャラリーのNISSAN CROSSINGは開設されてから数日で来場者がのべ数千人を記録し、VRChat内におけるワールドの人気度も非常に高くなっています。

photo

 その後、NISSAN CROSSINGを出発し、VR上で地球環境について考えるツアーが企画されるなど、単にVR上に企業コンテンツの3Dモデルが置かれているだけではない、実際に人と話題を集めるマーケティング活動が行われているのです。

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