ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

床の汚れをARで可視化 ゲーム感覚で掃除ができる“イカした”システムInnovative Tech

» 2021年12月06日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 青山学院大学ロペズ研究室の研究チームが開発した「Dustoon」は、掃除道具に付けたダストセンサーで周辺のちりの濃度を測定、MR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)にて掃除箇所の汚れ度合を可視化し、掃除を促すシステムだ。汚れている領域を掃除すると着色が除去されるため、ゲーム感覚で掃除が行える。

掃除機に3Dマーカーなどを装着した様子

 システムは、3Dマーカーとダストセンサー、マイコンを取り付けた掃除道具(ここでは掃除機を使用)と、光学シースルー型HMD(ここではHoloLens2を使用)で構成する。ダストセンサーとマイコンを収納する長方形の箱自体を3次元マーカーにした。

ダストセンサーとマイコン、3次元マーカーの外観

 ダストセンサーは、空気中粉じん濃度を測定できるSeeed Studio社のGrove Dust Sensorモジュールを使用。ダストセンサーで取得したちりの濃度の値をマイコンを介してBluetooth通信によりHMDへ送信する。

 HMDでは、搭載するカメラと深度センサーを使って、掃除道具に取り付けた3Dマーカーの位置を画像認識で検出する。掃除道具が通過した位置に合わせて、床面にARでちりの汚れ具合を可視化する。その際、ちりの濃度に応じて色を変えることで、どこが掃除できていないかを直感的に確認できる。

 床面への着色は、掃除道具が床に接触しているときにのみ行う。掃除中、掃除道具は頻繁に移動するため、位置座標も変化するがその間を切れ目なく重ねて描画することで、実際に通過場所に色が付いたような表示を可能にした。

掃除した箇所のちりの濃度によって、MR環境上の床への着色が変わる様子

 掃除道具に取り付ける3Dマーカーは、蜘蛛の巣のようなデザインの蓋や側面を特徴的な形にしたものなど、画像認識で位置を確認しやすいように工夫している。実験では、外周を複雑なデザインにした白色の箱が検出精度が高かったという。

(左)蓋部分が複雑な形状の3Dマーカー、(右)側面が複雑な形状の3Dマーカー、白色バージョンと青色バージョン

 また3Dマーカーを掃除道具のどの位置に設置すると検出精度が高くなるかの実験もしており、静止時は変わらないものの、掃除中は掃除機のパイプへの設置が高い検出精度を示した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.