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携帯電波は「基準の1万分の1程度で十分低い」 NICT調査 5Gもモニタリング継続

» 2021年12月07日 16時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 現在の電波強度は、電波防護法が示す基準値の1万分の1程度と十分に低い――情報通信研究機構(NICT)が、携帯電話基地局から出る電波強度の大規模調査を実施したところ、こんなことが分かったと12月7日に発表した。

photo NICTの調査報告より

 2019年以降、市街地、地下街、郊外など全国500カ所で携帯電話基地局から出る電波(地下街ではWi-Fi電波も含む)の強度を調査。約10年前の記録と比較して、変化を調べた。

 地域別の比較では、市街地は郊外に比べ電波強度の中央値が約4倍高い傾向にあった。10年前の調査でも同様の傾向が見られたという。地下街は郊外より若干高い程度だった。

photo NICTの調査報告より

 過去との比較では、10年前に比べ市街地や郊外での電波強度は約3倍に上昇していた。地下街では約100倍まで跳ね上がったが、これは10年前の測定時点では、携帯電話サービスを地下まで提供していなかった影響という。

 いずれの場合も、電波強度の中央値は基準値の1万分の1以下。最大でも基準値の1000分の1程度だったことから、NICTは「電波防護指針に対して十分に低いレベルである」と結論付けた。近年の海外(英国)での調査と比較しても最大値で15分の1程度と低水準だった。

photo NICTの調査報告より

 NICTは今後、5Gサービスの運用が本格化する中で電波強度がどのように変動するかも調べる。少なくとも40年までは電波強度の調査と公表を続ける。

 携帯電話やWi-Fiなどの通信に使う電波は、人体に悪影響を及ぼさない範囲での利用に限られている。一方、5Gの導入・普及を巡っては海外で5G電波による健康被害への不安が5G展開の障害になるケースもあり、日本でも一部で不安の声があるという。NICTはこれを受け「電波は目に見えず、強さが分からないことが問題」として2019年に電波強度の大規模な測定に乗り出した。

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