このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
仏ボルドー大学、蘭アムステルダム大学、独ルートヴィヒ・マクシミリアン大学、仏Institut Universitaire de Franceの研究チームが開発した「From collections of independent, mindless robots to flexible, mobile, and directional superstructures」は、小型ロボットの集合体が、自分たちを取り巻く大型ロボットを動かすシステムだ。多数の小型ロボットが中で動き回って大型ロボットを変形させ、細い隙間や障害物コースを通り抜けたり荷物を運んだりする。
中にいる小型ロボットは、プラスチックの本体と非対称の柔らかい複数の足、バッテリー、振動モジュールで構成。大きさは4.5×1.5cmの楕円形。150〜60Hzの周波数で作用する振動モジュールで移動する。
小型ロボットは、フォトトランジスタやDCモーターを積んだバージョンも作成。光を当てると電気が発生し、DCモーターが作動する。
小型ロボットのそれぞれが移動することで外側の大型ロボットが変形し、自己組織化することでさまざまな動きを生み出す。
目の前の障害物を乗り越えるには、小型ロボットや外側の大型ロボットの変形を監視して現状を把握し、適切な動きをしなければならない。
こうした監視は、小型ロボット本体の背中に貼った2色の目印をカラーカメラで撮影する。撮影した動画からロボットの重心、輪郭、位置、姿勢などを分析し、小型ロボットを配置して外側の大型ロボットをどのように変形させるかを適宜シミュレーションする。
実験では、小型ロボット20〜35台が1つの集団となって外側の大型ロボットを動かした。最初に大型ロボットよりも細い隙間を通れるかを実験。次に、大型ロボット内に円形の荷物を入れ、障害物を通り抜け荷物を引っ張って運べるかをテストした。最後に、ビリヤード台のような舞台上で円形のターゲットを四隅のポケットに収納するミッションを行い、成功させた。
今回の手法は動きに特徴があるため、動作している様子を動画で参照いただきたい。
J. F. Boudet, J. Lintuvuori, C. Lacouture, T. Barois, A. Deblais, K. Xie, S. Cassagnere, B. Tregon, D. B. Brückner, J. C. Baret, and H. Kellay, “From collections of independent, mindless robots to flexible, mobile, and directional superstructures” SCIENCE ROBOTICS, 21 Jul 2021, Vol 6, Issue 56, DOI: 10.1126/scirobotics.abd0272
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