このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米ジョージメイソン大学の研究チームが開発した「Joint Computational Design of Workspaces and Workplans」は、飲食店の厨房やレストラン、スーパーマーケットでの最適なレイアウトを自動設計するフレームワークだ。
その際に、スタッフ同士が衝突せず、何度も往復を必要としない最短ルートでタスクが行える位置に作業機器や陳列棚などを配置。そこで働くスタッフの能力を考慮した、タスクの振り分けを行い、最高のパフォーマンスを維持しつつ、スタッフの快適性を最大化するよう最適化する。
飲食店の厨房やスーパーマーケットでは複数のスタッフが同時に働いているが、スタッフたちはワークスペースを無駄な動きをせず効率的な動きで高い生産性を出しているだろうか。それには、的確な場所に作業機器がないといけないし、個人の能力も考慮しなければならない。この研究では、このようなワークスペースの活用を最適化する設計を自動作成するフレームワークを提案する。
フレームワークは、ワークスペース最適化とワークプラン最適化の2つのモジュールから構成して、これら2つを交互に実行しながら最適化していく。
ワークスペース最適化で作業機器などのオブジェクトの配置移動を行い、そのレイアウトに対して、ワークプラン最適化でシミュレーション(入ってくる仕事依頼に基づき、特定の順序で仕事を実行する)を行う。これら双方の最適化を数百回交互に繰り返し、最適な解を導き出す。
飲食店の場合、ワークスペースや作業機器(フライヤーやドリンクディスペンサー、レジなど)、スタッフエージェントとその特性、タスクリスト(ドリンク作り、ハンバーガーの調理など)が入力として与えられる。
働くスタッフはそれぞれ能力が違うため、どれだけ働いてきたかの経験値である熟練度や、歩行と旋回の2つの観点から身体的持久力を計算することで体力を考慮し、スタッフの作業負荷コストを計算する。その上でタスクを割り当てて、効率的なワークプランが作成する。同じタスクを複数のスタッフに割り当てることも可能だ。他方で、士気が下がるため、スタッフ間の仕事量を公平にした配分も考慮している。
レイアウト設計では、作業中のスタッフ同士が衝突しないために、複数のスタッフが通過する同じ場所を混雑領域とし、混雑回避のためのコストを組み込んでいる。テーブルや冷蔵庫などの障害物のギリギリを通過するのはスタッフのストレスになるため、ある程度のスペースで移動できるような設計を取り入れている。
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