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Twitter創業者ジャック・ドーシーが「Web3.0」に噛みついた理由 界隈で今何が起きているのか(2/4 ページ)

» 2021年12月28日 11時00分 公開
[星暁雄ITmedia]

 DAppsには、(1)秘密鍵で認証、(2)共有の資金プールの存在、という大きな2つの特徴がある。

 (1)の秘密鍵はユーザーが管理する。このことが「データやデジタル資産の所有権がユーザー側にある」ことを示す。DAppsへのサインアップやログインは、秘密鍵が手元にあるため、ワンクリックでデジタル署名をするだけだ。

 秘密鍵の管理は最初のうちは厄介に思えるかもしれないが、DAppsを使い慣れるとワンクリックでログインできる仕組みはごく自然な操作性に思えてくる。従来のWebサービスのサインアップのように、ユーザーIDとパスワードを決めて入力し、その他求められる個人情報も入力し、確認メールを受け取り、二段階認証を設定し——といった手続きが煩雑で頼りなく思える。

 ただし弱点があり、秘密鍵を紛失すると手も足も出なくなる。ユーザーサポートに泣きついても、秘密鍵を復元することは原理的にできない。またクライアントサイドのマルウェアに秘密鍵を盗まれるリスクがあることも要注意だ。

 秘密鍵、つまり所有権がユーザー側にあることが、DApps、そしてWeb3.0の大きな特徴だ。サービスはそのサービスのトークン保有者みんなが共同所有するものであり、特定の中心は存在せず、企業の都合でサービスが方向変更したりする心配はない——原則としては。

 (2)の共有の資金プールの仕組みを応用したものがDeFi(分散型金融)だ。「流動性プール」と呼ぶ仕組みに人々がお金を預け、ユーザーは利回りを得ることができる。詳しくは後述する。

 このようにWeb3.0はWebの大きな進化だ。

 だが、そこに異議を唱える言葉が投げ掛けられた。

ジャック・ドーシー氏とVCらの論争

ドーシー氏が現在CEOを務める決済サービスBlock(旧Square)

 Twitter創業者のジャック・ドーシー氏は、最近Twitter CEOの座を譲り、決済サービスBlock(旧Square)の経営やビットコイン関連技術をオープンソースの形で開発する新組織TBDに向かい合っている。そのドーシー氏が次のようにツイートした。

 「あなた方(一般の人々)はWeb3を所有することはできない。所有するのはVC(ベンチャー投資家)やLP(資金提供者)だ。彼らのインセンティブからは逃れられない。それ(Web3)は究極的には違う名前が付いた中央集権型のエンティティだ。あなた方は、自分が何に巻き込まれようとしているかを知るべきだ」

 ドーシー氏は何を批判しているのだろうか。筆者の考えでは、大きくは次の2つだ。

 1番目は、ベンチャー投資家(VC)への批判だ。

 VCのやり方は、ビットコインの理念であるディセントラライゼーション(非中央集権化/分散化/分権化)とは正反対だ。情報の非対称性に基づく特権的な資本の運用がVCの本質といえる。

 資本を投下してスタートアップ企業を急成長させ、イグジット(売却や上場など)により大きなリターンを得る。投資した資本は何百倍にも膨らんで返ってくる。このリターンは次の成長企業への投資に回る。VCは資本主義の効率をとことんまで追求し、集中した資本を増やす仕組みといえる。

 従って「VCがWeb3企業に投資しているなら、それはディセントラライゼーションからは遠い」との指摘には一理ある。もっとも投資家側は「エコシステムを加速させているだけで、支配している訳ではない」と反論するだろう。

 2番目は、「ビットコイン以外のブロックチェーン技術」への批判だ。

 ドーシー氏が追求するのはあくまでビットコインだ。それ以外のブロックチェーン技術は安全性、分権性、そして分配の公平性でビットコインよりも劣る——ビットコイン・マキシマリストはこのように主張する。この主張はその通りと筆者も考える。

 ドーシー氏に異議を唱えた人の中には「アプリケーションのためにはビットコインとは別のブロックチェーンが必要だ」という声もあったが、彼はそれに対して次のようにツイートしている。

 「私は、あなたと、あなたがシステムを理解する能力を信じます。個人や組織ではなく、大勢の人々が所有する真にセキュアで回復力がある技術に、エネルギーを集中させることが決定的に重要です。その基盤があってこそ、あなたが言うアプリケーションが可能になるのです」

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