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Twitter創業者ジャック・ドーシーが「Web3.0」に噛みついた理由 界隈で今何が起きているのか(4/4 ページ)

» 2021年12月28日 11時00分 公開
[星暁雄ITmedia]
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 伝統的金融ではゼロ金利状態が続いているのと比べると、DeFiサービスの利回りは全般に良い。年利10%程度はよく見る数字で、中には年利100%以上の数字が出る場合もある。もちろん高利回りになるほどリスクも高く、預けた資産が失われるケースもある(この辺りの詳細は後述する)。リスクを承知の上で、多くの投資家が手持ちの暗号通貨をDeFiの流動性プールに投入している。

 DeFiへの資金投入額を示す「TVL」(Total Value Locked)の金額は、統計サービスDefi Llamaによれば2021年の1年間で実に約15倍に膨らんだ。2020年12月25日のTVLは171億9000万ドルだったが、記事執筆時点では2595億4000万ドル、日本円換算で29兆7000億円相当に上る。日本の2020年度のGDPは535兆5000億円なので、その5.5%に相当する。これはニュージーランド1国のGDPに相当する金額だ。

 DeFiは一種の金融サービスだが、これとは別に「みんなのお金」を集めた、イーサリアム関連新規開発プロジェクトへの報奨金制度も運用されている。これは人々の寄付とひも付いて、アルゴリズムで算出された金額をイーサリアム財団からも支出するというものだ。いわば開発者を支援する仕組みもWeb3.0の形で機能している訳だ。

 社会還元の取り組みもある。イーサリアム財団は国連機関と協力し、子どもの教育支援など複数の分野で資金援助を行っている。

 イーサリアムのエコシステムは、非中央集権的なベンチャー投資や、社会還元のための寄付制度を生み出そうとしているのだ。

Web3.0の“ダークサイド”——盗難や市場混乱に巻き込まれる可能性

 このようにイーサリアムやWeb3.0は注目すべきものだが、一方で要警戒の事柄も多い。

 スマートコントラクトのバグを突いて資金を盗難するハッキング事件はいくつも発生している。また、集まったお金をDeFiの運営者が横領してしまう「Rug Pull」(持ち逃げ)も発生している。ブロックチェーン監視ツールを提供する米Chainalysisの調査によれば、2021年のRug Pullの被害額は28億ドルに上る。

 21年6月にはステーブルコインを運営するIron Financeで「取り付け騒動」が発生した。まずIron Financeのガバナンストークン「TITAN」の価格がゼロ近くまで暴落。これは一部の大口投資家がTITANに大量の「売り」を出したことがきっかけといわれる。

 TITANが無価値になったことに伴い、TITANを組み入れたステーブルコイン「IRON」の価格も75%まで下落した。TITANと他の暗号通貨のペアを、前述した流動性プールに預けると年利数千%台と異常な高利回りが得られていたのだが、それらの資産価値はペア全体でほぼ消えてしまった。

 これ以外にも、大口投資家が相場を操作したり、サービス運営方針に影響を及ぼしたりする可能性はある。

 ドーシー氏の一連の発言は、現状のWeb3.0と呼ばれる分野のエコシステムが完璧ではないことを非難するものだ。ただし完璧なシステムがいつ誕生するのかは分からない。可能性に注目するか、ダークサイドに注目するかで、見方はまるで変わってくる。

ドットコムバブルの再来になるか

 Web3.0を巡る動きや語り口を見て、筆者が思い出すのはドットコムバブルだ。1999年から2000年にかけて米国のハイテク企業株が高騰、インターネットが大ブームになり、2001年にはバブル崩壊が起きた。

 多くの企業がインターネットに関心を持ち、インターネット接続環境が整備された。そして、バブルの焼け野原の後から、AmazonやGoogleを筆頭に、今知られているインターネット企業が育った。

 ドットコムバブルがインターネット環境の整備を促進したように、Web3のブームは、ディセントラライズドWeb(DApps)の利用者を増やし、次の段階のデジタル革命への準備となるかもしれない。逆に、バブル崩壊で資産を失う人が大勢出て終息に向かうかもしれない。

 どのような未来が待っているかは分からないが、“みんなのお金”を集め、みんなで投票してお金の将来を決める、新たな資本主義システムが生まれつつあることは決定的に重要だと筆者は考えている。インターネットの未来に関心がある人にとって、Web3.0やDApps、DeFi、イーサリアム、そしてブロックチェーンは、調べる価値や取り組む価値が十分にある分野だ。そしてもちろん、ドーシーらが取り組むビットコイン関連プロジェクトもだ。

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